第99回日本医療機器学会大会

講演情報

一般演題

滅菌

滅菌2

2024年6月22日(土) 11:00 〜 12:00 第1会場 (アネックスホール F201+F202)

座長:柴田義浩(国立病院機構再春医療センター)

11:50 〜 12:00

[74] 過酸化水素ガス滅菌における工程中止の主因〔濡れ〕の定量評価の試み

石田 克之 (北海道大学病院 物流管理センター 材料室)

【はじめに】
当院において,過酸化水素ガス滅菌の工程中止が度々報告されている.工程の機序から推察すると,減圧乾燥機能作動中においてチャンバー内から気体を排除するまでの設定時間を超過したことが原因と考えられる.洗浄後RMDの乾燥が不十分な場合における工程中断を排除するために,滅菌前の濡れについて定量的に評価するための試験を実施した.
【方法】
1.採用する滅菌プログラムの規格である最大9.7kg程度の参照負荷と共に,RO水を入れた 10.0mL容量のシリンジを積載し,水量については10.0mLから開始し,0.8mLまで減量して滅菌した.2.工程が中止する最少量について確認した.3.工程が中止せず,進行する最多量について確認をした.4.水量1.0mLを手動操作によるハーフサイクル試験で評価した.
【結果】
1.水量10.0mLから2.0mLの場合,減圧乾燥機能作動時間内に規定値まで減圧せず,中止した.2.工程中止の最少量2.0mLの場合,減圧によってシリンジから漏出した水の一部が凍結凝固した.3.水量0.8mLを積載した場合,減圧乾燥機能作動時において濡れを検出したが,気化した水は設定時間内に排気され,工程は遅滞なく進行した.手動操作による3回のハーフサイクル試験において,BIは陰性だった.4.水量1.0mLを積載したハーフサイクル試験において,工程の中止と完了,BIが陽性と陰性を示すなど結果にばらつきがあった.
【考察】
減圧の過程でシリンジから漏出する水の受け皿としたシャーレを乾燥不良の被滅菌物とみなした場合,常圧から減圧する間の沸点の推移に伴う気化熱の温度変化によって水は著しく低温となり,被滅菌物の温度上昇を妨げることが考えられる.低温の被滅菌物表面に吸着した過酸化水素ガスは直ちに凝縮し,チャンバー内の濃度低下を惹起することによって,濡れている RMDだけでなく,バッチの滅菌に悪影響を及ぼす懸念がある.