第99回日本医療機器学会大会

講演情報

一般演題

医療機器管理

医療機器管理1

2024年6月22日(土) 14:00 〜 15:10 第2会場 (アネックスホール F203)

座長:髙橋 典彦(岩見沢市立総合病院)

14:10 〜 14:20

[89] 輸液ポンプを使用中に気泡警報が発報せず,下流側に気泡が流入した事例

久保 梨紗子1, 沖 尚弥1, 加藤 孝昭1, 一柳 宏1, 藤井 雄介1,2, 相木 一輝1,2, 藤原 道隆2 (1.名古屋大学医学部附属病院 臨床工学技術部, 2.名古屋大学医学部附属病院 医療機器総合管理部)

【背景】
輸液ポンプにおける気泡送液トラブルは時に重篤な結果をもたらす.ヒューマンエラー的な要因で報告されていることが多いが,機器の不具合が原因の場合もある.
【事例】
ICUにてTERUMO社製輸液ポンプ( 以下 TE-LM800A)を使用して,レムデシビルに生理食塩水を添加したものを投与していた.投与完了後,気泡警報が発報し,投与が停止されるはずが,停止せず下流側へ気泡が流入した.
【原因探索と結果】
当該機種のポンプ動作履歴を確認し,メーカへ解析依頼をおこなった.動作履歴には,気泡混入警報はなかった.外観の確認では,気泡センサ直下の突起部の破損があり,ドアケース下流側の変形も確認されたが,衝撃の履歴はなかった.メーカ回答も破損部の状態とポンプ動作履歴に関して同じ見解であった.
【考察】
気泡センサ直下の突起部はセンサ間の液残りを防止するためのものであり,この部分の破損が,気泡流入の根本的な原因ではないかと考えられる.気泡警報の仕組みとして,ドアと本体それぞれにセンサが存在し,2点間の超音波伝搬信号が閾値以上になると「液あり」,また 2点間に気泡が5~6mm以上存在すると超音波伝搬信号が閾値以下になり「液なし」と判断する.装置外観には明らかな破損はなく,衝撃履歴もなかったが,なんらかの原因で,突起部が破損したことにより,センサ部に液残りが生じ,「液なし」と判断できず,気泡警報が発報しなかったと考えられる.
【結語】
日常点検後であっても,患者に使用する前に機器に異常がないか確認することと,また落下した場合は,外観に明らかな破損がなくとも,使用せず点検に出す必要がある.