第99回日本医療機器学会大会

講演情報

教育講演

教育講演4 ロボット支援手術、支援する方も大変です

2024年6月22日(土) 09:45 〜 10:25 第3会場 (アネックスホール F205+F206)

座長:佐久間 一郎(東京大学)

09:45 〜 10:25

[教育講演4] ロボット支援手術,支援するほうも大変です

深柄 和彦 (東京大学医学部附属病院 手術部)

ここまで手術医療において急速に技術革新が進むとは,20 ~ 30年前には,日本を代表する当時の大教授・天才外科医のみなさんも予想だにしなかったことだろう.華麗なメスさばき,鑷子の動き,ハサミの切れ味・・助手による絶妙な視野展開と確実かつ素早い糸結び・・もちろん,今も必要不可欠な手術手技の数々であり,外科医の腕の見せ所であることに変わりない.しかし,これらの手技が,鏡視下に,さらにはロボット支援手術下におこなわれるようになり,天才外科医の評価基準も大きく変わってきた.今や,ロボット支援手術の腕の良さこそが,進んだ外科医の勲章と言えるかもしれない.
残念ながら,すべての手術室にロボット支援手術機器を備えることができる施設はわが国にはなさそうである.一方,次から次にいろいろなロボット支援手術の保険適用が認められ,患者もそれを求めて病院を選択する.熱心な外科医をそろえる病院ではロボット支援手術枠の取り合いになる.
当院ではda Vinciが2台,hinotoriが1台稼働している.手術室の管理者であるわれわれは,これらをどのように運用するか,いつも頭を悩ませている.
悩みの種の原因として,
1)手術枠の割り振り:みんな枠が欲しい
2)セッティング:誰がするのか,どのくらい迅速にできるのか
3)対応できる看護師の育成:誰でも器械出し・外回りにつけるわけではない
4)故障の際の対応:病院スタッフの誰にもわからない
5)緊急時の対応:鉗子類の速やかな操作,緊急ロールアウト,訓練が必要
6)手術以外の時間が長くなる:麻酔科をはじめ各部署の協力体制必要
7)個人情報保護の問題:企業からのデータ送信の依頼
8)カメラ・鉗子の管理:高額,使用回数上限,適切な再生処理の難しさ
9)病院収益:本当に利益は出るのか?
10)そもそも発展途上のシステム:より良いシステムにするためには?
などが挙げられる.
今回,これらの問題にどのようにわれわれが対応しているかご紹介する.ロボット支援手術のみならず,今後の新しいシステム導入の際の参考にもなること,ロボット支援手術機器を備えていない施設にとっても手術室運営のお役にたてることを祈っている.