第99回日本医療機器学会大会

講演情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション1 モニター・アラーム対策を考える〜医療従事者と企業との協働を目指して〜

2024年6月21日(金) 15:20 〜 16:45 第1会場 (アネックスホール F201+F202)

座長:谷口 雄司(鳥取大学),林 達哉(旭川医科大学)

15:48 〜 16:02

[パネルディスカッション1] 新時代のバイタルモニタリング

―多企業との共同開発―

惠川 淳二 (奈良県立医科大学集中治療部)

現在ほとんどの病院において,重症患者や継続的な監視の必要な患者のモニタリングに酸素飽和度モニタや心電図モニタが使用されている.これらのモニタ情報はベッドサイドおよびセントラルモニタで常に表示され,異常が検知されればモニタのアラームが鳴動し,医療者がその異常に気づくことができるようになっている.しかし,このような一般的なシステムを使用しているにも関わらず,医療者が異常アラームに気づくことができずに,患者が死亡するという事例が後を絶たない.こういった事例が起こる原因は複数存在し,それらが単一もしくは複合的に重なることで大きなインシデントにつながっていると考えられる.原因としては,①ベッドサイドモニタやセントラルモニタを常に監視し続けることができない,②アラームへの対応者が不明確である,③鳴り過ぎるアラームによるアラーム疲労,④担当者が対応できない際のバックアップ体制の不備,⑤アラーム鳴動時のスタッフの対応方法が確立していないことが挙げられる.当院では,これらの問題に対応するために,モバイルモニタリングシステムの開発をおこなってきた.このシステムは,個々の看護師が持つナースコール端末にアラーム情報が伝えられ,ナースコール上で患者の異常に気づくことができることが特徴である.これによって,医療者は「いつでも・どこでも」異常に気づくことができ,アラームへの対応者も明確になる.ただし,このシステムを実際に運用するためには,現場教育や個々の病棟に合わせた運用フローの綿密な構築が必須となる.本システムの開発は,奈良県立医科大学が5社の企業と協働して開発したものである.これらの中には,競合するモニタを扱う企業が複数参入しており,それぞれが垣根を越えて一堂に会して開発をおこなったということは非常に画期的なことである.本パネルディスカッションでは,これらの経緯について紹介したい.