第99回日本医療機器学会大会

講演情報

大会長講演

大会長講演 医療と技術の融合をマネジメントで支えDXで加速したい!

2024年6月21日(金) 11:20 〜 12:00 第1会場 (アネックスホール F201+F202)

座長:松本 謙一(サクラグローバルホールディング株式会社)

11:20 〜 12:00

[大会長講演] 医療と技術の融合をマネジメントで支えDXで加速したい!

林 正晃 (第一医科㈱)

【はじめに】
2023年に当学会は100周年を迎え,「100周年記念座談会」にて高階雅紀理事長をはじめ歴代理事長のお考えに触れ多くの記録にも目を通した.学会定款の文言や医療機器(以前は醫科器械,医科器械)を学会の名称に戴くことからも明白なことに,当学会では多くの先人が医療と技術の融合の価値を繰り返し提起し,いかに多くの課題があるかを示し,これに対処した経験と気づきを共有し,方法論を普遍化しようと挑戦された尽力も垣間見える.
1998年に医療機器メーカに入社し2005年から代表取締役社長を務める約20年で,設計開発,規制対応,診療報酬設計,市販後対応,災害対応,そして会社経営全般に関わり,医師をはじめ多くの医療従事者や医療施設の管理者はもちろん,患者,家族,下請けの製造者や流通事業者とやり取りし,海外事業者や巨大企業,また業界団体や官公庁の方々とも接してきたことで,100年の歴史には遠く及ばぬものの医療と技術の融合が抱える課題を経験してきた.これらの課題に対処し前に進むことが,企業経営者としてのミッションの一つであり,また日本医学会第34分科会としてアカデミアを称する当学会のミッションにつながると思慮する.以上の背景をもってプログラム委員長をお引き受けいただいた美代賢吾先生とご相談して「マネジメントとDX」を本大会のキーワードに加えたその意図についてお話しする.
【医療機器産業と医療機器開発におけるマネジメントとDX,人材】
当学会と小職の接点を軸として実際の経験をお話しする.第80回大会(2005)岡野宏先生による「校正が可能な簡易型高感度漏れ電流計の開発」のメンバーとして医療機器の電気安全規格JIS T 0601-1
(1999)と規格要求事項への適合に関する報告に始まり,第88回大会(2013)「既存医療機器の改良事例報告-医工連携への挑戦から-」でAMEDの原型となる経済産業省インハウス委託事業受託でのチーム組成・事業管理主体設置・専門機関への適切な相談と製造販売業を持つ中小企業に関する考察,第95回大会(2020)「既存医療機器の改良事例報告-医工連携への挑戦から-第2報」でその社会実装までの治験や保険収載やビジネスモデル構築と経営理念に至る7年の経験の考察,第98回大会(2023)「当学会周年記念誌から考察する企業会員の活動」を振り返る.
そしてDXが上記のあらゆるプロセスを加速することについて,また少子高齢社会および人口減少を前提にマネジメントにおいて重要度が高まる人材の話題を,その育成とキャリアの視点で当学会の MDIC,(一社)日本医療機器産業連合会,(公財)医療機器センターの活動を交えてお話しする.いずれも現在から未来に向かう話題であり,個人的な考えを述べるに留まればいかにも力不足であるが,これに代わり本大会でお話し頂ける多彩な先生方の講演と特別企画について紹介する.
最後に自身の経験として,田中滋先生の指導による修士論文「プラットフォーム型ケア・マネジメント-高齢者ケアに関する需給マッチングの研究-」(1996)での介護保険制度と民間営利企業活躍の可能性の考察と,中西正和先生の指導による学士論文「遺伝的アルゴリズムによるロボット戦術プログラムの生成 Program Synthesis for Robot War using Genetic Algorithm - Towards Open- ended Games -」(1994)でのAIに関する研究を振り返り,未来を創る学生の方にとって将来のキャリアへの参考になれば幸いである.
【結語】
第66回大会(1991)松本謙一大会長が示された「バラ色でありたい! 21世紀の医療そして医科器械」の力強い意思をあらためて受け止め,第98回大会(2023)深柄和彦大会長が示された「現状を把握して皆でステップアップ」に沿い,今日,第99回大会テーマを「医療と技術の融合をマネジメントで支えDXで加速したい!」として,参加の皆様の何かしらの気づきにつながること,そして来年第100回大会につながることを祈念する.