第99回日本医療機器学会大会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム5 物流2024年問題への取り組み事例―メーカ・卸の立場から―

2024年6月22日(土) 15:30 〜 16:55 第3会場 (アネックスホール F205+F206)

座長:島田 正司(小西医療器株式会社),南 正人(市立芦屋病院)

16:20 〜 16:45

[シンポジウム5] 卸業者・SPD 事業者としての 2024 年問題について

島田 正司 (小西医療器㈱)

少子高齢化・労働人口減少と騒がれ随分経過し,さらに2024年問題と言われてきましたが,2024年となり,その速度と各社の対応は比例しているのでしょうか?
私達の医療業界においても環境変化が起こっております.「地域医療連携や病院統合再編の加速」,「複雑化・高度化する医療革新の進化」,「新たな感染症や災害等における医療体制の確保の必要性」,「医療の透明性確保や説明責任がより重要視される」,「医療従事者への負担増の懸念(働き方改革対応)」などが挙げられます.
医療現場での医療資源は,手術準備,使用後の補充,発注などの一連のフローが可及的速やかに実施する必要があり,情報インフラの整備が急務とされる.
しかしながら,現実的には,限られたヒト(医療従事者)・モノ(医療物資)・カネ(コスト)のバランスをもとに,各医療施設の考えのもとに「医療物流の可視化とデータ活用」は限定的なものとなっております.
また,製造業者・卸業者としては,診療材料等における棚卸しや余剰在庫の増加,使用期限切れによる廃棄等を防ぐために多くの時間を要し,従来手順の見直しや業務効率化が課題となっている.在庫調整,生産計画にも貢献できる情報インフラの整備は強く求められる要件であると考えます.
近年,医療業界のIT化が進む中で,管理手法やシステムの高度化が図られ,最新技術を用いた医療資源の管理を導入する施設も散見するようになり,普及に伴い,今後は導入コストも安価になることも予想される.
SPDという医療資源の管理をおこなうツールにおいても,労働人口不足に伴う合理化と,トレーサビリティを含めた医療の安全という,相反するテーマの実現が求められている.
そんな状況下,2024年問題について物流のみならず医師の働き方改革も実施されます.
何故,物流2024問題=物流クライシスについては,我が国の貨物輸送の92%がトラック輸送であり,残業960時間(年)以内規制により長距離(トラック輸送の60%)ほど届かなくなる.全物流の90%が企業間物流という現実を考えると,モノが届かなくなる前に「つくれない」現実が訪れます.さらにトラックドライバーの労働時間は2割長く給与は2割低いと言われており,労働人口不足にさらなる拍車をかけると予測されます.
2024年問題で14.2%の荷物が届かなくなると言われておりますが,これは始まりに過ぎません.ドライバー不足により2030年には輸送能力が▲19.5%(5.4t不足)となり,2024年問題と併せると輸送能力が▲34.1%(9.4t不足)すると予測されております.
2024年問題の大きな対応とし,製造元からの統一管理には,国内・海外を通じたグローバル管理が望まれるが,そのためには,法の整備のもとでの製造業者による共通コードによる一元化はさらなる合理化へ向け期待するところである.
病院経営は増々厳しくなることが予測され,また,労働人口の減少による人材はさらに不足していくことから,最小の資源で最大限のパフォーマンスを発揮できるIT化の進歩への期待と,積極的な利活用をして行きたい.