第99回日本医療機器学会大会

講演情報

特別講演

特別講演2 管理職・現場リーダーが知っておきたい人材マネジメント~現場を変える3つのポイント~

2024年6月21日(金) 14:15 〜 15:15 第1会場 (アネックスホール F201+F202)

座長:山浦 健(九州大学)

14:15 〜 15:15

[特別講演2] 管理職・現場リーダーが知っておきたい人材マネジメント

~現場を変える3つのポイント~

裵 英洙 (慶應義塾大学大学院)

昨今,医療政策の三位一体改革(地域医療構想・医療職の働き方改革・医師の偏在対策)やコロナ禍を含めた様々な外部環境の変化により,医療を取り巻く環境はますます厳しくなってきています.また,医療経営の視点では,一般病院の多くが赤字経営,民間の一般病院の医業利益率は数%程度と,著しく厳しい経営環境に置かれており,人的資源やICTシステムへの十分な投資が難しい医療機関が多いのが現状です.このような厳しい環境の中で,医療機関は働き方改革や人材育成を進めなければなりません.
特に,医師の働き方改革において,2024年4月から時間外労働の上限規制がスタートし,多くの医療機関では試行錯誤の中で改革を進めている最中です.それら働き方改革を進めるための大きな武器としてタスク・シフト/シェアが注目されています.ただ,誰に,どの業務を,どのように,いつまでにタスク・シフト/シェアしていくのか,の方法論は定まったものがなく,マネジメント現場の差し迫った課題と言われています.医療機関における意義ある働き方改革の実現には,タスク・シフト/シェアの確実な実施が必要であるのは間違いありません.
また,医療機関は職員の多様なキャリア開発や働きがいの向上を進めつつ,良質な医療を確実かつ効率的に提供しなければならず,優秀な人材に活き活きと長く勤続してもらう環境を構築する必要があります.ここ数年のコロナ禍を通じて,医療は社会インフラであり,社会貢献を基礎とした素晴らしい事業であることが再認識されました.だからこそ,医療の世界で働く一人ひとりが社会貢献意識を維持し,やりがいを持って,納得して働き続けることができる環境の構築がさらに必要となっていくことが考えられます.つまり,質の高い医療を継続的に提供するためには,働く人々のモチベーションやそれを支える管理職クラスのマネジメントスキルやリーダーシップが今まで以上に重要となってきています.
さらに,一般企業のみならず医療機関でも,様々な仕事観・人生観を有する職員が増えてきており,職員自体の考え方の多様性が広がっています.Z世代を含む若手職員が相対的に増えてきており,管理職は世代間ギャップの広がりや若手人材のマネジメントに苦労している声も多く上がってきています.医療を含めた労働集約ビジネスは人材が価値提供の源泉であり,その人材を活かす管理職・現場リーダーのマネジメント力こそが企業価値の向上に直結します.
そこで,今回は,演者が委員として加わった厚生労働省「医師の働き方に関する検討会」「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」での議論を踏まえて,働き方改革の方向性や内容を分かりやすくお伝えします.そして,その改革を進めるために現場リーダーや管理職が知っておいて頂きたい人材マネジメントについて,①モチベーションマネジメント,②コミュニケーションマネジメント,③世代間マネジメント,の3つのポイントからお話しします.