第99回日本医療機器学会大会

講演情報

一般演題

洗浄

洗浄3

2024年6月22日(土) 14:00 〜 15:20 第1会場 (アネックスホール F201+F202)

座長:長瀬 清(岐阜大学)

15:10 〜 15:20

[T82] 医療器具内部の残留バイオフィルムの存在と新規酵素を用いる洗浄ソリューション

鈴木 陽一1, Tianhu Zhao2, Jiarui Huang2 (1.ノボザイムズ ジャパン㈱コンシューマーバイオソリューション事業部, 2.ノボザイムズ(中国)投資㈲)

【はじめに】
医療の発展に伴い,医療器材の内部構造は複雑化し,従来の洗浄プロセスでは除去が困難な有機物,微生物の残留によって形成されたバイオフィルムが洗浄後にも残留する事例が多く報告されている.産業用酵素メーカである当社は,医療器具洗浄向けに,新酵素種であるフォスフォジエステラーゼ,グリコシドヒドロラーゼの販売を開始した.本発表では,それらを従来のプロテアーゼと併用することによるバイオフィルム除去効果を紹介する.
【方法】
PTFEチューブ中にISO 15883-5に則って緑膿菌あるいは黄色ブドウ球菌を培養し,バイオフィルムを形成させる.過酢酸で生菌を処理したのち,酵素を段階的に組み合わせて添加した洗浄剤のバイオフィルムに対する洗浄力を比較した.クリスタルバイオレットでの残存バイオフィルムの染色定量に加え,残存DNA・タンパク質などを分析した.
【結果】
プロテアーゼを含むモデル洗剤では不十分であったバイオフィルムの除去洗浄が,フォスフォジエステラーゼEveris® Next,グリコシドヒドロラーゼEveris® Guardの添加によって段階的,効果的におこなえることが確認された.
【考察】
これらの結果は,新規酵素がバイオフィルムの構成成分である多糖や,DNAを特異的に分解したことにより,洗浄成分が効果的にバイオフィルムを除去したと説明できる.実効果が期待できる組み合わせのマルチ酵素ソリューションによって確実な洗浄を実現することで院内感染のリスク低減にも貢献したい.
【課題】
本発表中では,便宜上各単離菌のバイオフィルムを対象としたが,実際の医療器具内部のバイオフィルムは,より多様な菌によって構成される菌叢によるものと推察される.洗浄剤メーカ各社での評価や,医療機関で実際に使用を繰り返した医療機器の洗浄の機会を得て,現場での効果を確認することが必要不可欠といえる.