第42回日本磁気共鳴医学会大会

講演情報

一般演題

fMRI-基礎

fMRI-基礎

2014年9月19日(金) 15:00 〜 15:50 第2会場 (3F 源氏の間東)

座長:福永雅喜(生理学研究所 心理生理学研究部門)

[O-2-163] 超薄型フレキシブル刺激電極を用いたラットの運動野電気刺激によるfMRI

ドンミン キム1,2, 陳揚1, Reuveny Amir1,2, 関谷毅1,2,3, 染谷隆夫1,2, 関野正樹1,2 (1.東京大学工学系研究科, 2.JST ERATO染谷生体調和エレクトロニクスプロジェクト, 3.大阪大学産業科学研究所)

本研究では,MRIに映らない超薄型フレキシブル刺激電極を開発し,ラットの脳の硬膜外から大脳皮質運動野へ直接的に電気刺激を与えながら,fMRIの撮影を行った.その結果,運動誘発電位の閾値以下と閾値以上とで異なる電気刺激強度に応じて,誘発された脳内の活動領域の変化を可視化することができた.これまでに,電極を用いた大脳皮質の電気刺激は,神経障害性疼痛において痛みの緩和に有効であることが臨床研究で示されているが,その治療のメカニズムに関しては十分に明らかされていない.電気刺激による脳の活動変化を調べるためにPET測定による研究が主に行われてきたが,その理由は,MRI測定が高い空間分解能の利点をもちながらも,埋め込んだ電極によって画像が乱れ,誘導電流による発熱の恐れもあるためである.本研究では,MRIに映らない超薄型フレキシブル刺激電極を開発した.この電極は1 μmのパリレン基板上に100 nmの非磁性導体の金薄膜を蒸着し,露出する電極部分を除いてパリレン絶縁膜をコーティングする方法で作成した.その際,刺激電極部分の導体の厚さは,7-TのMRI装置における磁気共鳴周波数の300 MHzの表皮厚に対して1/45程度であり,実験的に求めたMR信号の消失は約4.2%であった.開発された電極をラットの前肢運動野の硬膜外に貼り付け,運動誘発電位の閾値に対して80%と110%の刺激強度で電気刺激をしながら,fMRIの撮影を行った.その結果,閾値以下の刺激強度では,同側の視床や線条体で正のBOLD信号が観測できるが,閾値以上の刺激では対側の運動感覚野と同側の側坐核で負のBOLD信号が観測できた.このような刺激強度の活動領域の変化は,運動野刺激により誘発された末梢の運動が,運動制御の神経経路にフィードバックされることによると考える.大脳皮質への電気刺激による脳の活動領域の依存性を調べることで,電気刺激による神経障害性疼痛の緩和のメカニズムの解明も期待できる.