[O-2-270] チタン合金とステンレス鋼製キルシュナーにおけるRF発熱リスクの比較
【背景・目的】MRI検査における非磁性金属インプラントのRF発熱には、その形状や配置など様々な要因が関与する。当研究グループは、インプラント径、長さおよびMR装置への入力体重の変化が発熱リスクに及ぼす影響について報告した(JSMRM 2012, 2013)。本研究の目的は、インプラント素材の違いによるRF発熱リスクの検証であり、実際に臨床使用されるチタン合金とステンレス鋼製の同形キルシュナーを用い、発熱試験を実施した。【方法】同形となるよう製作したチタン合金(Ti-6Al-4V)およびステンレス鋼(SUS316L)製の2mmφ15cmのキルシュナーを人体等価ファントムの表面からX, Y軸ともに2cm、静磁場B0に対し平行、先端部がB0の中心となるよう設置し、体重設定を100kg、全身SAR2.0となるFSE系シーケンスを用いて15分間以上のRF照射を行い、先端部から基部までを1.5cm間隔にて蛍光ファイバー式温度計を用いて測定した。【結果】チタン合金製キルシュナーの上昇温度は、先端部17.5℃、中心部1.9℃、基部16.5℃、ステンレス鋼製は先端部17.1℃、中心部1.8℃、基部15.6℃となり、両キルシュナーの温度上昇は同様の傾向を示した。【考察】RFにより発生した渦電流による金属の発熱量には、電気伝導率、透磁率、比熱、比重等のパラメータが関与する。過去に行われたチタン合金製インプラントの発熱試験では、ステンレス鋼製に比較して同等以下の温度上昇であったことが報告されている。しかしながら、本検討では、いずれの材料が使用されたキルシュナーも、先端部と基部は同程度の急激な温度上昇を認めた。Ti-6Al-4Vの電気伝導率は、SUS316Lと比較して低く、RF発熱の抑制パラメータとなる一方、比較して小さな比重は反対にRF発熱を増強する因子になったと考えられる。金属インプラントのRFによる発熱リスクは、素材の各種パラメータと形状を十分に考慮する必要があると思われた。【結論】チタン合金製キルシュナーは、ステンレス鋼製と同等のRF発熱リスクを有する場合があり、金属製インプラント留置患者に対し検査を行う際は、チタン製であっても形状や位置に留意しながら、RF送信平均出力(B1rms)を小さく設定する必要があると考えられた。