[S4-6] 前立腺癌におけるDWIによる定量評価の現状と将来展望
異なる2つないし3つのb値を使って拡散強調画像を撮影しmonoexponential modelに基づいて算出するADC値は簡便で、前立腺癌の質的診断や悪性度評価(Gleason scoreとの相関)に有用であることから、臨床に広く普及しているが、b値に大きく依存するという欠点もある。多くの(5~10つ)b値を用いて、拡散の早い組織と遅い組織という2つのコンパートメントを設定する、biexponential modelの方がmonoexponential modelより優れており、組織内の水分子の拡散をより正確に評価できることが期待される。小さいb値を使用して潅流と拡散を分離するいわゆるIVIMの他、前立腺癌では非常に高いb値を使用して拡散の早い組織と遅い組織を分離するbiexponential modelも試みられている。上記のmonoexponential modelもbiexponential model(IVIM)も、水分子の拡散を遮るものがなく、拡散は空間的にどの方向に対して正規分布(ガウス分布 Gaussian)を呈するという仮定に基づいた手法であるが、実際の生体内の微細構造は非常に複雑で、水分子の広がる空間は非常に制限され、水分子の広がりは正規分布から大きく逸脱している(非ガウス分布 non-Gaussian)。正規分布から逸脱する水分子の拡散状態を、正規分布からのずれ(逸脱)を示す統計量として画像化したものにDiffusion kurtosis Imagingがあり、最近、注目を浴びている。拡散強調画像は、様々な新しい解析法が生まれ、水分子の体内での動きから種々の組織や臓器の生態あるいは病態解析が非侵襲的に行えるようになってきている。今後は、真のバイオマーカーの一つとして、更なる臨床応用(悪性度の評価、予後予測など)、臨床データの蓄積が望まれる。