第42回日本磁気共鳴医学会大会

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シンポジウム

シンポジウム4

拡散強調MRIで何が見えるか-水透過性と灌流の可視化-

Fri. Sep 19, 2014 1:40 PM - 5:20 PM 第1会場 (5F 古今の間北・中)

座長:押尾晃一(慶應義塾大学医学部 放射線診断科), 小畠隆行(放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター)

[S4-7] IVIMと非ガウス拡散MRI - 癌診断におけるバイオマーカーとしての可能性

飯間麻美1, Le Bihan Denis2,3, 片岡正子1, 富樫かおり1 (1.京都大学大学院医学研究科 放射線医学講座, 2.京都大学大学院医学研究科 脳機能総合研究センター, 3.フランス ニューロスピン)

IVIM(IntraVoxel Incoherent Motion)イメージングは拡散MRIで得られる信号に寄与しうるすべての微視的なトランスレーショナル運動を定量的に評価するための概念である。生体内では、これらの運動は細胞内及び細胞外スペースでの水分子の拡散、そして毛細血管のネットワーク内の血液の微小循環(灌流)により構成されている。(ボクセルレベルで)ランダムに走行する毛細血管の流れは拡散現象に類似し(pseudo-diffusion)、Le Bihanらによりdiffusionとpseudo-diffusionを包含するIVIMの概念が1986年頃に導入された。近年、IVIM MRIは(IVIM導入時に検討されていた脳神経領域よりも)特に体幹部への応用において著しい復活を遂げた。またMRIスキャナの発達に伴い、臨床症例にこの概念を応用するにあたり解析方法においてもさらなる発展が可能となってきた。臨床でこの方法を最大限に活用するには、IVIMの概念をより深く理解し、方法の長所と限界を明確に理解することが重要である。拡散と灌流を分離するには良好なS/N比を必要とし、(アーチファクト、bulk flow phonemenaの影響など)克服するべきいくつかの技術的課題がある。IVIMイメージングは、使用されるb値の範囲、及び血管の種類により異なった影響を受けることが知られている。400s/mm2未満の非常に低いb値における信号のふるまいは微小循環を反映しているが、血液量や血流との関係は明確にされていない。1000s/mm2より高いb値においては、生体組織内の拡散は自由(Gaussian)ではなく多くの障害(特に細胞膜)により制限されている為、解析の際には曲線の屈曲度を考慮する必要がある。したがって適切に拡散効果を評価し、純粋なIVIM成分を抽出する為には非ガウス拡散モデルを適用することも重要である。現在多くの腫瘍における診断、治療効果判定にあたり、造影剤を用いた腫瘍の血流動態の評価が重要な位置を占めている。上述のIVIMは、従来の造影剤を用いた評価にとって代わる可能性のある有望な手法であると考えられ、基礎実験及び臨床応用が進められている。