第21回認知神経リハビリテーション学会学術集会

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小児

[S6-02] 右痙性麻痺の男児に対する歩行能力向上に向けたアプローチ
ー 注意機能に着目して ー

*川村 陸1、木村 絵梨1、高橋 秀和1、余語 風香1、志比川 亮1、木村 正剛1 (1. 北海道こども発達研究センター)

【はじめに】
 脳出血により右痙性麻痺を呈した症例に対し歩行機能における到達機能・支持機能の向上を目的とした臨床実施について報告する.

【症例紹介】
 左側脳室周囲白質陳旧性出血により右痙性麻痺を呈している4歳4ヶ月の男児.歩行時の到達機能において足関節底屈位によるtoe dragでのswingや,支持機能において足関節底屈位による前足部での支持が出現し非対称性歩容となる.それにより躓きやふらつき等歩容の不安定さが出現する.口頭指示がなければ身体各部位への注意の集中・選択は困難であり、持続に関しては口頭指示でも困難である.

【病態解釈・治療仮説】
 本症例は自己身体や特異的病理に対し注意の集中や選択・持続が困難である.また下腿三頭筋の伸張反射が亢進しており,足関節の運動制御困難により底屈位での支持・遊脚を遂行している.注意の賦活により,運動制御獲得や圧分析・空間認知を改善することで底屈位での遊脚や支持が改善され,歩容改善に繋がると仮説を立てた.

【アプローチ】
 身体運動に注意が向きにくい事より、環境に対して身体運動が与える変化への注意を促し,対象児の興味を引きやすい車の玩具を使用することで視覚的な状況変化に注意を向けた.学習した運動の保持やパフォーマンスの即時的変化を図るため以下の課題を実施した.①単軸不安定板と車の玩具を使用した足関節運動制御課題②足底に対する圧分析課題③単軸不安定板とシムを用いた踵部の空間分析課題

【結果】
 視覚的な注意の促しにより伸張反射制御が可能となり,また非麻痺側や他動的な運動で運動・視覚イメージを想起する事で更に制御が容易となった.注意を活性化させる事で足底全面での圧情報は概ね分析可能だが踵部に限定した圧分析には誤差あり.空間情報の差異が顕著であれば分析が可能.環境に対して注意を向け課題を実施することで身体部位への注意の集中・選択が可能となり,躓きの減少や足底全面での荷重が可能となる.

【考察】
 身体部位に注意が向きにくいため道具などの視覚的状況変化に注意を向け課題を実施した事により運動・視覚イメージが容易となり,それにより自己身体へ注意が向き運動制御が可能になったと考える.今後は注意の持続の獲得やアプローチと実際の身体動作との合致の理解を促す必要があると考える.

【倫理的配慮、説明と同意】
 発表に際し所属法人の承認を得て,プライバシーの保護について説明し同意を得た.