Riabilitazione Neurocognitiva 2021

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小児

[S6-04] 視線と言語の共有課題により,言語発達が促された症例

*余語 風香1、木村 絵梨1、高橋 秀和1、志比川 亮1、川村 陸1、木村 正剛1 (1. 北海道こども発達研究センター)

【はじめに】
 自閉症児は,社会性障害,コミュニケーション障害,反復行為といった特徴がみられる.今回,他者とのやり取りにおいて重要な視線の共有に焦点を当てアプローチを行った.認知課題を通し,他者との視線の共有について改善がみられ,言語獲得に至った症例について報告する.

【症例紹介】
 2歳8か月男児.診断名なし.ご家族様からは「言語の遅れがあり心配だ」との訴えあり.視覚情報では注意の全体性と選択が可能であるが、視覚・言語情報ともに注意の持続が難しい.使用する道具や内容についての記憶は可能だった.自ら他者へ視線を向ける事は出来るも,他者からの視線や行動には拒否的な反応が見られた.課題中は1人で遊び始める事が多くあり,やり取りの成立のしにくさがあった.遠城寺式乳幼児分析的発達検査(以下,遠城寺式と表記)の結果は理解1才,発語10か月であった.

【病態解釈】
 言語を獲得するためには,共同注視や社会的参照といった他者との非言語的な能力によるやり取りの成立が必須となるが,本症例は共同注視や他者に注意を向けるといった能力が乏しかった.そのため視覚情報と聴覚情報の異種感覚統合を行うことが阻害され言語発達の遅れを呈していると解釈した.

【治療介入と結果】
 ①共同注意を獲得する目的にて,セラピストが提示したものと「同じ」ものを選ぶ視覚分析課題②相手とのやり取りを成立させることを目的に「どっち?」という言葉の意味理解の促進と2択からの選択課題③言語を獲得することを目的に単語レベルで視覚情報と聴覚情報の統合課題を行った.道具は本児が興味のある乗り物や,キャラクターの人形を使用した.課題難易度は本児の発達年齢に合わせ調整を行った.利用から半年で,「見て」と共同注視を求める反応や,課題の正誤を判断するため社会的参照をする場面が増加した.他者に注意を向け他者を含めたやり取りが成立可能となった後から名詞句や挨拶語の表出が増加した. 半年経過時の遠城寺式の結果は理解2歳3か月,発語は1歳5か月であった.

【考察】
 共同注意や社会的参照が可能となり,相手の意図を推察する機会が増加し他者とのやり取りが成立するようになったと考える.また,他者と共同注視が成立し,視覚情報と聴覚情報を統合したことにより言語獲得に至ったと考える.

【倫理的配慮、説明と同意】
 発表に際し所属法人の承認を得て,プライバシーの保護について説明し同意を得た.