Riabilitazione Neurocognitiva 2022

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一般演題

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[S2] 神経系(上肢)

[S2-05] 「利き手ではないから」と言って左手の低使用を認めた脳卒中症例

*豊田 拓磨1、國友 晃1,2、釣井 空1、沖田 かおる1、沖田 学1,2 (1. 愛宕病院リハビリテーション部、2. 愛宕病院 脳神経センター ニューロリハビリテーション部門)

【はじめに】
 症例は両手動作時に左上肢の遅延および低使用を認め,それを自己の病態として捉えられなかった.症例に両手動作を介して病態の認識を促した結果,左上肢の低使用が改善したため以下に報告する.
【症例紹介】
 症例は尾状核から視床に脳出血を呈した50歳台の男性である.発症初期は左のBRSが上肢手指Ⅵ,Fugl-Meyer Assessmentの上肢項目が66/66,STEFが右97,左が81であった.感覚は問題なかった.高次脳機能面は記憶障害を認めた.観察所見は手洗いが右手で左手を洗う動きがみられ,両手動作時に左手の遅延および低使用を認めた.水平板を使用して両手を水平位で保持するように促すと左側に傾斜したが,症例は目視で確認し「利き手ではないから左手は生活で使わない」と発言した.
【病態解釈】
 視床病変で生じた運動無視により運動の不使用および低使用を認めることがある(Laplane,1983).視床病変の症例も左上肢の運動麻痺は軽度だが,両手動作時に左上肢の低使用を認め運動無視の症状であった.症例の特徴は両手動作で左手の遅延を認識するが,自己の病態として捉えられなかった.そのため,行為を修正困難にしたと解釈した.
【介入方法および経過】
 手洗い時の両手での相互的な動作を学習することを目的に両上肢の位置関係を認識する課題や両手を使った素材識別を実施した.左手のみの素材識別は誤認しないが,両手は誤認することが多かった.しかし,症例が左手に注意を向けて課題を遂行すると誤認が減った.
【結果】
 発症2週後の退院時に観察すると,手洗いは右手で左手を洗う動きが残存した.症例は「生活の中で左手を使うように意識している」と内省が変化した.発症6週後の外来リハビリでSTEFが右99,左が93であった.手洗いは両手を同時に動かすことが可能となった.
【考察】
 今回,症例は両手動作時の左手の遅延が自己の病態として捉えられないため,退院後の生活に左上肢の低使用および不使用になる可能性が大きいことが考えられた.症例に両手動作を介して左手の認識を促した結果,症例の左上肢に対する認識の変化とともに行為の改善がみられた.加えて,左手に対する内省の変化が運動無視の改善に影響したと考えた.
【倫理的配慮(説明と同意)】
 対象者本人から発表に関して書面にて説明し同意を得た.また,個人情報保護の観点から匿名性に十分な配慮を行った.