第22回認知神経リハビリテーション学会学術集会

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[S2] 神経系(上肢)

[S2-07] CEA後の強い運動時振戦に対し非麻痺側手を用いた
介入を探索的に実施した一症例

*平見 彩貴1、石橋 凜太郎1、寺田 萌1、藤原 瑶平1、市村 幸盛1 (1. 医療法人穂翔会村田病院リハビリテーション部)

【はじめに】
振戦とは,協働筋群と拮抗筋群が律動性,反復性に収縮する不随意運動である(波田野ら,2019).今回,内頚動脈(IC)狭窄症に対する頸動脈内膜剥離術(CEA)後に強い運動時振戦を呈した一症例に対し介入を行い,一定の改善を得たため報告する.

【症例】
左前頭葉内側,頭頂葉の脳梗塞を発症した60歳代男性.発症1か月後,左IC狭窄に対しCEAが施行された.術後,上肢および手指に強い運動時振戦が出現したが,破裂動脈瘤クリッピング術の施行歴があり,MRIが撮像できず原因精査は困難であった.術前の症状としては,BRSは右上肢Ⅳ,手指Ⅴ,感覚は重度鈍麻,高次脳機能障害では注意障害と観念運動失行を認めていたが,術後は感覚のみ軽度鈍麻に改善した.術後,運動単位の動員量の調整は困難で,手指の運動時は,振戦を制御しようと肩や肘関節にも過剰出力を示し,物品操作では把持した物品を弾き落とした.肩や肘関節の振戦は,鏡を用いた視覚的な注意の誘導や,セラピストの徒手的介助では変化しなかった.振戦が生じている部分に非麻痺側手で触れると著しく軽減し,そのまま到達運動を介助させると消失したが,気付きには至らなかった.身体部位のポインティングでは各関節で末梢側へのズレを認めた.

【病態解釈と治療方針】
空間内で正確な身体運動の制御を行なうには自己身体の位置や動きを認識することが重要である(内藤,2007)ことから,本症例においても,運動単位の動員異常と感覚障害に加え,身体の空間的配置の認識エラーにより,運動部位や動員量にエラーが生じていると考えた.非麻痺側手で触れることで振戦が軽減する現象は,セルフタッチの原理(Weiskrantz,1987)と同様に,麻痺側手の知覚が可能となった結果であると考え,非麻痺側手で触れながら運動の誤差修正を行うことで,振戦の制御が可能になると考えた.

【介入】
非麻痺側手による介助下での到達課題を設定した.段階付けは,麻痺側手の運動単位の動員量や参加させる関節数,物品の有無にて行い,1日1時間,1か月間実施した.

【結果と考察】
振戦は,ブロックの操作が可能となる程度まで軽減した.セルフタッチにより,麻痺側手の知覚が向上し,空間的配置の認識エラーが改善したことで,運動単位の調整が可能となり,振戦の改善につながったと考えた.

【倫理的配慮】
発表に関して症例に口頭で説明し,同意を得た.