第22回認知神経リハビリテーション学会学術集会

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[S6] 小児

[S6-01] 場面緘黙症児に対する関わり

*余語 風香1、髙橋 秀和1、木村 正剛1 (1. 北海道こども発達研究センター)

【はじめに】
場面緘黙症状が認められる児童の中には,ことばの遅れや発達障害を伴う場合があり,場面や対人に対する不安の軽減のみならず言語障害や実行機能といった側面から訓練を実施することが求められる.今回,発達障害を伴う場面緘黙症児への非言語・言語訓練を実施した症例について報告する.

【症例紹介】
幼少期に場面緘黙症と診断された8才女児.初回介入時,音声表出はないが,指差しや字を介すことで概ねやり取りは成立.首振りや頷き反応には曖昧さがあった.2語文の理解は可能も,3~4語文では視覚・聴覚情報ともに主語選択のエラーがあった.表情筋を中心に高い緊張がみられ,身体的な動きは乏しく,目線は下を向きアイコンタクトの困難さがあった.記憶可能な量は3つで、同年齢の平均値(5)に比べ少なさを認めた.また,幼少期に社会的場面にて,周囲から音声言語の表出を期待される場面があり,言語表出を回避する様子が続いた.客観的評価として,発話・表情・身体動作レベルチェックリスト(趙成河ら,2019)を用いた.

【病態解釈】
場面緘黙症は,社会的・文化的・心理的な要因で発症し,不安に対処することに慣れていないことも症状を誘発する原因であるとされている.本症例では相手の反応を見聞きすることの不十分さや,言語理解の遅れがさらに症状を助長しているのではないかと仮定した.

【治療介入と結果】
2~4語文で説明が可能な絵カードを使用した解読訓練と,対面に座る相手の視線分析訓練を実施した.反応は首振りや頷きといった非言語的反応を要求した.治療介入期間は6週間を設け,8回訓練を実施した.再評価時身体の筋緊張軽減(2→4),ささやき声での表出(2→5)が得られ,他者の顔を見る頻度やアイコンタクトの頻度が増加した.

【考察】
場面緘黙症児には,不安そのものの軽減を図るための治療法が効果的とされており,社会場面に対する不安の軽減により症状の緩和が期待される.発達障害により言語理解が低下している場合は不安軽減に対しての阻害因子となる可能性がある.今回,発達障害を伴う場面緘黙症児に対して言語的な難易度の設定に配慮した訓練を実施したことが場面緘黙症状の軽減の一助となったと考えた.

【倫理的配慮、説明と同意】
保護者にプライバシーの保護について説明し同意を得た.