第23回認知神経リハビリテーション学会学術集会

講演情報

クリニカル・セミナー

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[CS] クリニカルセミナー②

2023年10月7日(土) 13:40 〜 14:30 第2会場 (B2F 多目的スペース)

座長:大島 埴生(岡山リハビリテーション病院)

13:40 〜 14:30

[CS-02] メタ認知 ー自己を知ることの意味ー

*本田 慎一郎1 (1. リハ塾SHIN)

右半球損傷による代表的な高次脳機能障害の1つに半側空間無視(Unilateral Spatial Neglect:以下,USN)がある.USNは積極的なリハビリテーション(以下,リハ)を受けることによって神経心理学的検査では著明な異常が認められないレベルまで改善することはある.一方でセラピストがいない自然(日常生活)状況下ではUSNが出現していることが指摘されており,近年問題視されている.すなわちUSNの本質的改善につながるリハ介入の困難さを意味している.
 今回約半年間,医療機関でリハを受け神経心理学的検査では著明な異常が認められないレベルまで改善し退院したが,自宅の浴室へ向かう引き戸,そしてあるスーパーの特定の場所,計2か所において,いつも左肩をぶつけるというUSNの残存症例を担当する機会を得た.症例は「1日も早く職業復帰したいので,左手をもっとよくしてほしい」と機能回復に対する強い訴えがあった.そこで認知理論に基づいた上肢のリハを症例の自宅で実施した.
 介入約6回目頃(介入から約3週間~1か月経過時)に,初回介入時に聴取したUSN症状を確認した.すると「そういわれてみると,全くぶつからなくなりました」と発症から2年4か月続いていたUSN症状の改善に関する記述が得られた.これらの事実を材料に「自己を知ることの意味」について検討してみたい.
 当日の流れとしては,まず症例の初回介入時の訓練,学習の定着化に関する記述,そしてUSN症状の改善に関する対話の映像記録を提示する.次に「身体図式が環境に向かって行為可能性を投射し環境から帰ってくる反響を知覚する(田中, 2022)」という生態学的現象学の視点から病態を解釈する.そのうえで上肢に対する訓練によってUSN症状の改善が図れた事実をリフレクションし,症例のどのような「自己」の改変が生じたのか検討する.最後に認知理論に基づく訓練構造とギャラガー(2000)の「自己論」との接点にも触れてみたい.