第23回認知神経リハビリテーション学会学術集会

講演情報

一般演題

ポスター発表

[P2] 神経系(上肢)

[P2-01] 左上肢の誤用による肩関節痛及び神経障害性疼痛を認めた生活期右視床損傷症例の治療経過

*國友 晃1,2、松村 智宏1,2、豊田 拓磨1、佐藤 誠1、沖田 かおる1、沖田 学1,2 (1. 愛宕病院 リハビリテーション部、2. 愛宕病院 脳神経センター ニューロリハビリテーション部門)

【はじめに】
 今回,右視床損傷症例に対して左上肢の認識課題を行った結果,疼痛の軽減と左上肢の運動の質と生活での使用頻度が改善した経過を報告する.

【症例紹介と方法】
 症例は7ヶ月前に脳出血を発症し2週間の集中リハ目的にて入院となった40歳台の男性で主訴は「左の肩と腕が上らない」であった.左側のBRSは上下肢及び手指がⅤ,感覚は上肢手指の表在感覚はNRSで12/10で過敏であり,深部感覚は軽度鈍麻であった.また左上肢全体に冷刺激によるアロディニアを認めた.筋力(kg)は握力が右46.0左11.0であった.左上肢の管理に「動かさないと硬くなるから痛くても動かしている」であった.痛みの質の評価はSF-MPQ-2にて,神経障害性疼痛の項目が高値であった.生活期における上肢機能評価(WMFT)はtimeが211.74秒で運動の質(FAS)が50/75であり,肩肘の運動項目で努力性及び肩関節痛を認めた.生活における麻痺側の使用頻度と運動の質の評価(JASMID)は使用頻度が73/100,運動の質が74/100であった.また左上肢の認識は肩の運動方向と距離を誤認し,手指の素材識別時「硬さの違いで当てている」であった.

【病態解釈】
 視床損傷による左上肢の神経因性疼痛加え, 左上肢の誤用による筋骨格系疼痛により適切な体性感覚情報の認識が困難であると推察した.これらの要因が生活での麻痺肢の使用頻度と運動の質が低下していると解釈した.

【治療介入】
 治療目標を,左側肩関節の運動方向と距離及び左手指で表面性状を認識できるとした.内容は左肩関節の運動方向と距離を問う課題を第1から2段階で課題を行った.加えて,左手指にて表面性を識別する課題を第3段階にて実施した.また生活上では過度な肩外転パターンとならないように自主練習と生活動作に応じた指導を行った.

【結果】
 2週後のSF-MPQ-2は,神経障害性疼痛は低減したが筋骨格系疼痛が増悪した.WMFTのFASは58に改善した.素材識別課題時の内省は「つるつるとざらざらがわかる」と変化した.JASMIDでは2週後は変化を認めなかったが3カ月後に使用頻度が100,運動の質が78へ向上した.

【考察】
 適切な患手管理教育と体性感覚情報の認識により左上肢運動時の疼痛が軽減し生活での使用頻度と運動の質が改善したと考える.

【倫理的配慮(説明と同意)】
 発表に対して説明し同意を得た.