[P2-08] 聴神経腫瘍による失調により書字障害を呈した症例への介入
【はじめに】
今回,両側聴神経腫瘍による小脳の圧迫により失調症状を呈し,書字が困難であった症例に対し,認知運動課題を実施した結果,改善がみられたので報告する.
【症例紹介・評価】
症例は20年以上前に両側聴神経腫瘍を発症し,5回目の右腫瘍摘出術目的で入院となった40歳台の男性である. オペ前評価としてBRSは上肢・手指ともにⅥであった.感覚は表在覚は正常であったが深部覚は軽度鈍麻であった.STEFが右64点で左92点であった.失調評価CCSは上肢項目28/33であった.また上肢の協調性運動機能評価のTrace Coder(TC)を用いて交差する点を叩打させる打突テストと螺旋をなぞるトレーステストではズレが生じていた. JASMIDで書字の使用頻度は2/5,動作の質は2/5で特に「小さい字を書くことが難しい」と発言した.
【病態解釈】
小脳失調者の振戦は,小脳内のフィードフォワード系の神経回路を利用できないために,フィードバック系だけに頼る結果,フィードバック時間の遅れなどから振動が生じる(大須,2005).症例も小脳の圧迫により振戦が出現し,「小さい字が書くことが難しい」との発言の通り振戦が書字に影響を与えていると解釈した .
【課題および結果】
すべての課題で第1段階から第3段階で行うように段階づけた.上肢の運動では様々な形の軌道版を用いた.手指に対する課題として円軌道を用いた.またペンを把持し閉眼で軌道をなぞりどのような軌道だったか予測させた.その他,書字練習や両手動作練習を実施した.課題中には「動きがわかりづらい」から「動きが分かると震えが少なくなる」との発言が聞かれた.術後8週後の評価ではSTEFは右87点,左98点であった.CCSは31/33であった.TCの打突テスト,トレーステストともに改善を認めた.日常生活での書字の使用頻度は5/5,動作の質も5/5で「震えることが少なくなってちゃんと書ける」と発言した.
【考察】
小脳の順・逆モデルいずれの場合においてもリハビリテーション分野において重要なことは,フィードフォワード化した円滑な動作学習である(後藤,2014).今回,改善にはオペにより小脳圧迫が排除されたことが主であるが,1日の課題でも行為や内省の変化があることから予測・調整を行う課題が有効であったと考えた.
【説明と同意】
発表については書面にて説明し,同意を得た.
今回,両側聴神経腫瘍による小脳の圧迫により失調症状を呈し,書字が困難であった症例に対し,認知運動課題を実施した結果,改善がみられたので報告する.
【症例紹介・評価】
症例は20年以上前に両側聴神経腫瘍を発症し,5回目の右腫瘍摘出術目的で入院となった40歳台の男性である. オペ前評価としてBRSは上肢・手指ともにⅥであった.感覚は表在覚は正常であったが深部覚は軽度鈍麻であった.STEFが右64点で左92点であった.失調評価CCSは上肢項目28/33であった.また上肢の協調性運動機能評価のTrace Coder(TC)を用いて交差する点を叩打させる打突テストと螺旋をなぞるトレーステストではズレが生じていた. JASMIDで書字の使用頻度は2/5,動作の質は2/5で特に「小さい字を書くことが難しい」と発言した.
【病態解釈】
小脳失調者の振戦は,小脳内のフィードフォワード系の神経回路を利用できないために,フィードバック系だけに頼る結果,フィードバック時間の遅れなどから振動が生じる(大須,2005).症例も小脳の圧迫により振戦が出現し,「小さい字が書くことが難しい」との発言の通り振戦が書字に影響を与えていると解釈した .
【課題および結果】
すべての課題で第1段階から第3段階で行うように段階づけた.上肢の運動では様々な形の軌道版を用いた.手指に対する課題として円軌道を用いた.またペンを把持し閉眼で軌道をなぞりどのような軌道だったか予測させた.その他,書字練習や両手動作練習を実施した.課題中には「動きがわかりづらい」から「動きが分かると震えが少なくなる」との発言が聞かれた.術後8週後の評価ではSTEFは右87点,左98点であった.CCSは31/33であった.TCの打突テスト,トレーステストともに改善を認めた.日常生活での書字の使用頻度は5/5,動作の質も5/5で「震えることが少なくなってちゃんと書ける」と発言した.
【考察】
小脳の順・逆モデルいずれの場合においてもリハビリテーション分野において重要なことは,フィードフォワード化した円滑な動作学習である(後藤,2014).今回,改善にはオペにより小脳圧迫が排除されたことが主であるが,1日の課題でも行為や内省の変化があることから予測・調整を行う課題が有効であったと考えた.
【説明と同意】
発表については書面にて説明し,同意を得た.