第23回認知神経リハビリテーション学会学術集会

講演情報

一般演題

ポスター発表

[P3] 神経系(下肢・体幹)

[P3-02] 机上での運動イメージ課題後,実動作の比較により方向転換が改善した右上小脳動脈梗塞後の一症例

*山形 繁広1 (1. 兵庫県立西宮病院)

【はじめに】
 右上小脳動脈梗塞後,方向転換の問題が残存した症例を経験した.机上の運動イメージ課題と方向転換の実動作の比較により頭部,体幹と足の向きの関係性の構築が図れ,方向転換が改善したため報告する.

【症例】
 80歳後半の男性.右上小脳動脈梗塞と診断.初期評価SARA16点.眼振や注視麻痺は認めず,下肢に失調症状がみられた.8病日SARA5点,補助具なし歩行が見守り,TUG18.7秒.13病日Mini-BESTest15点であった.左方向転換時の視線は常に前方でコーンを回るのに7歩要し,左足が常に先行しコーンに衝突していた.写真を用いたメンタルローテーションは可能であった.方向転換時の運動イメージを足の写真と骨盤を見立てた板を用いて評価すると「骨盤は意識していない」,「方向がわからなくなりグラッとしそうで怖いから慎重になる」と記述していた.

【病態解釈】
 左方向転換の運動イメージは,左足が先行し右足が後ろからついていくようにしないと回れないであり,実動作と一致していた.机上の運動イメージ課題で足の向きと骨盤の方向性の予測を促し,方向転換の実動作と比較することで視覚や頭部の位置と骨盤・下肢の関係性構築に繋がると考えた.

【経過】
 40分4回の介入を実施.机上にて下肢と骨盤の関係性と方向性の認知課題を実施した後,方向転換の実動作と比較した.方向を変える時の骨盤と目線の方向に注意を向け関係性の構築を図った.最終評価16病日SARA2点,TUG17.9秒,Mini-BESTest21点に改善した.「頭から足がセットになって一緒に動いている感じ」と記述し,方向転換時コーンに衝突することなくステップターンが可能となった.

【考察】
 ステップターンの支持脚方向では,頭部と腰部が同期して動く(中村ら, 2016).本症例は視線が固定され頭部と骨盤の方向性にエラーが生じていたものと推察された.また,方向転換は視覚・前庭・固有感覚や上半身・下半身を含めた感覚の適切な重み付けが重要である(Lamontagne A. et al., 2007).机上にて方向転換時の頭部から下肢の位置関係を整理したことで予測情報の一助となり,方向転換の実動作との比較が視覚と体幹・下肢の固有感覚の関係性構築に繋がったのではないかと考えた.

【倫理的配慮,説明と同意】
 本発表は本人と所属機関内の倫理委員会で承認を得た(承認番号R5-11).