[P3-05] 左足底の浮遊感から自動車運転に不安を感じるとの訴えを認めた症例への介入
―重心位置が右偏位した座位姿勢から考える-
【はじめに】
今回,左半身の感覚障害から重心位置が右偏位した座位姿勢を認め左足底に対する浮遊感を訴える症例に対し,臀部圧情報から身体の対称性を学習することで足底圧への意識に変化が生じ,自動車運転の安定性獲得に繋がったため報告する.
【事例】
右視床出血により左片麻痺 (BRS上肢Ⅴ下肢Ⅳ)を呈した60代女性.右利き.回復期リハビリを経て,発症2か月で自宅退院となり訪問リハビリが開始.左下肢の表在・深部感覚共に中等度鈍麻であり,特に末梢の感覚障害が強く足底でのスポンジ圧の識別は困難であった.目立った高次脳機能障害は認めなかった.
介入前,訓練時の座位では「左足が浮いている感じがする」「運転中に左足がブレーキの下に潜り込みそうで怖い」との訴えがあり,両手で左大腿部を上から押さえつけ一時的に足底の安心感を得ていたが,活動と共に再び不安感が出現した.また,座位は常に右臀部荷重優位であり鏡などの視覚情報がないと気付くことができなかった.
【病態解釈】
感覚障害が強く単なる足底圧の認識課題では行為は改善せず,さらに自己身体の認識は視覚情報の依存度が高く体性感覚情報に注意が向きにくい状態であった.しかし,感覚障害を有しながらも末梢に比べて坐骨や股関節の認識は得られやすい特徴を利用し,左右の臀部圧情報から左右差を比較することで対称性を認識し重心位置を正中軸へ修正できれば,足底圧の意識変化に繋がるのではないかと考え訓練を構築した.
【訓練及び結果】
訓練は座位で骨盤を左右に傾斜させ両坐骨に対する臀部圧の変化に意識を向ける課題を週1回40分の介入で2週間実施した.結果「運転中に左足を見てなくても怖くない」と記述が変化し,左坐骨で荷重を捉え正中軸の右偏位が軽減すると左足底が浮いている感覚が消失した.また「入浴中に膝の上においた桶を水平に保ち水を零すことも減った」という記述も得られ,汎化した行為の広がりも確認できた.
【考察】
臀部からの感覚入力による情報は水平に関する感覚基準を形成し,身体と支持面との相対的な空間的位置関係についての情報源になる(板谷,2015)と言われている.臀部圧情報を介して身体両側の情報が適切に統合され,その結果左下肢の意識変化に繋がり運転時の不安が消失したと考える.
【倫理的配慮】
本発表は本人に説明し同意を得た.
今回,左半身の感覚障害から重心位置が右偏位した座位姿勢を認め左足底に対する浮遊感を訴える症例に対し,臀部圧情報から身体の対称性を学習することで足底圧への意識に変化が生じ,自動車運転の安定性獲得に繋がったため報告する.
【事例】
右視床出血により左片麻痺 (BRS上肢Ⅴ下肢Ⅳ)を呈した60代女性.右利き.回復期リハビリを経て,発症2か月で自宅退院となり訪問リハビリが開始.左下肢の表在・深部感覚共に中等度鈍麻であり,特に末梢の感覚障害が強く足底でのスポンジ圧の識別は困難であった.目立った高次脳機能障害は認めなかった.
介入前,訓練時の座位では「左足が浮いている感じがする」「運転中に左足がブレーキの下に潜り込みそうで怖い」との訴えがあり,両手で左大腿部を上から押さえつけ一時的に足底の安心感を得ていたが,活動と共に再び不安感が出現した.また,座位は常に右臀部荷重優位であり鏡などの視覚情報がないと気付くことができなかった.
【病態解釈】
感覚障害が強く単なる足底圧の認識課題では行為は改善せず,さらに自己身体の認識は視覚情報の依存度が高く体性感覚情報に注意が向きにくい状態であった.しかし,感覚障害を有しながらも末梢に比べて坐骨や股関節の認識は得られやすい特徴を利用し,左右の臀部圧情報から左右差を比較することで対称性を認識し重心位置を正中軸へ修正できれば,足底圧の意識変化に繋がるのではないかと考え訓練を構築した.
【訓練及び結果】
訓練は座位で骨盤を左右に傾斜させ両坐骨に対する臀部圧の変化に意識を向ける課題を週1回40分の介入で2週間実施した.結果「運転中に左足を見てなくても怖くない」と記述が変化し,左坐骨で荷重を捉え正中軸の右偏位が軽減すると左足底が浮いている感覚が消失した.また「入浴中に膝の上においた桶を水平に保ち水を零すことも減った」という記述も得られ,汎化した行為の広がりも確認できた.
【考察】
臀部からの感覚入力による情報は水平に関する感覚基準を形成し,身体と支持面との相対的な空間的位置関係についての情報源になる(板谷,2015)と言われている.臀部圧情報を介して身体両側の情報が適切に統合され,その結果左下肢の意識変化に繋がり運転時の不安が消失したと考える.
【倫理的配慮】
本発表は本人に説明し同意を得た.