Riabilitazione Neurocognitiva 2023

Presentation information

一般演題

ポスター発表

[P3] 神経系(下肢・体幹)

[P3-08] 首下がりを呈したパーキンソン病患者への介入経験-視覚情報としての文字の有用性の検討-

*三上 純1,2、壹岐 伸弥2、川口 琢也2 (1. 株式会社フルラフ、2. 医療法人香庸会 川口脳神経外科リハビリクリニック)

【はじめに】
 文字を読む際には眼球運動,視覚,音韻,意味といった個々の情報を処理する脳部位が関与しているとされている.今回,首下がりを呈したパーキンソン病(PD)患者に対して,固有感覚の統合に視覚情報として文字を使用した訓練の可能性を経過から考察する.

【症例紹介】
 80歳代男性.11年前にPDと診断され,1年前より徐々に首下がり出現し運動緩慢が悪化したため,リハビリテーション目的で当運動特化型通所介護施設の利用を開始した.Unified Parkinson's Disease Rating Scale(UPDRS) PARTⅢ33/56点,MMSE30/30点,FAB13/18点,座位姿勢は上部体幹屈曲62°,頸部屈曲60°垂直位と認識していた.評価的訓練で,体幹の変化に対しての臀部圧や足圧の変化を問うたが認識が困難であった.絵カードを使用して体幹の変化に伴う臀部圧や足圧の変化は想起することが可能であったため,視覚的認識の是正後,固有感覚の認識と視覚イメージの統合を図ったが,固有感覚の認識と視覚イメージの統合は困難であった.

【病態解釈・治療介入】
 Nieuwboerは前頭葉機能の低下しているPD患者に視覚的手掛かりは処理容量が大きいと報告しており,前頭葉機能の低下が疑われる本症例には過負荷となっていると考えた.本症例の場合,固有感覚のみでは垂直位の誤認があったため,生活歴からなじみのある文字(漢字)を視覚情報とし固有感覚の統合を図った.①3種類の文字カードを提示し自身の姿勢と比較②文字カードに従い固有感覚を想起③②で想起した固有感覚を元に体幹の変化に伴う臀部圧や足圧の変化を認識する訓練を実施した.

【結果】
 3ヶ月後,週1回の介入により視線の変化と体幹の位置,臀部圧,足圧との関係性を認識することが可能となり,上部体幹屈曲51°,頸部屈曲44°と改善がみられた.

【考察】
 Liは,漢字の認知は視覚優位で形から意味を予測することができ効率が良いと述べている.前頭葉機能の低下した本症例にとって,漢字による文字提示は文字の保存性が情報処理・変換を容易にし,視覚と固有感覚の統合に有用に働いた可能性が考えられた.

【倫理的配慮、説明と同意】
 本発表に関して,症例に書面にて説明し同意を得た.