第23回認知神経リハビリテーション学会学術集会

講演情報

一般演題

ポスター発表

[P3] 神経系(下肢・体幹)

[P3-13] 転倒を繰り返していた多発性硬化症の一例 〜下肢の空間情報から足底圧情報へ〜

*塚原 奨1、宮島 唯一2 (1. つくば双愛病院 訪問看護ステーションくきざき、2. ホームケア本八幡)

【はじめに】
  10年前に多発性硬化症,小脳梗塞を発症し,右下肢の感覚障害・疼痛を呈し立位・歩行不安定にて転倒を繰り返していた患者に対して訪問リハビリで行った訓練の一例として,下肢の空間情報から足底圧の構築を図ることで,歩行安定性の向上を図れたため紹介する.

【症例紹介・病態解釈】
 多発性硬化症と小脳梗塞を発症後,外来リハビリや訪問リハビリを行っていた60歳代女性.「転ばないように」「右足が痺れてよくわかんない」と訴えが聞かれ,日常的に後方へ転倒を繰り返されていた.BRS上肢Ⅵ下肢Ⅵ手指Ⅵ.右下肢の触覚重度鈍麻,運動覚正常,位置覚中等度鈍麻,右下肢全体の痺れと痺れに伴う疼痛あり.失調,認知機能障害・言語機能障害はなし.立位保持は体幹右側屈位,両股関節伸展・外転・外旋位,両膝関節屈曲位であり,前後左右に動揺があり.10秒程度の保持で,恐怖感の訴え聞かれる.歩行はワイドベース,小刻み歩行.足部不安定板や足底スポンジは痺れ・疼痛によって注意を向けることができず,足底圧情報を構築することができなかった.股関節と膝関節の位置関係から足部の位置・足底圧情報の構築を行うことで,痺れがある状態でも足底圧の変化に注意を向けるようになった.

【考察】
 本症例は痺れと痺れに伴う疼痛から足底圧情報に注意を向けることが困難で,転倒を繰り返していたと思われる.座位傾斜板にて股関節内外転,内外旋の空間情報を問う中で,股関節と膝関節,足部の位置関係から足底圧情報の構築が行え, 痺れがある状態でも足底圧の変化に注意を向けるようになった.足底圧情報から重心移動・各関節の関係性を構築することができ,立位保持の動揺が減少し,2分以上保持が可能となり,歩行時の小刻み歩行にも改善に繋がったと考える.

【倫理的配慮,説明と同意】
 症例に対して本発表の目的を説明し,同意を得た.