[P3-14] 脊髄損傷の病態に対して活動日誌を用いた認知行動療法の経験
− 歩行がADLに汎化しない症例 −
【はじめに】
今回,外傷性脊髄損傷による重度の感覚障害,膀胱直腸障害を呈したことで,歩行や排泄に対しての不安が強く,歩行がADLに汎化しない症例に対し,活動日誌を使用した認知行動療法を経験したので報告する.
【症例紹介】
50歳代,男性.身長160㎝,体重69㎏.交通事故でA病院に搬送され,非骨傷性頚髄損傷(C6/C7)による対麻痺と診断.剣状突起~両下肢全体にかけて重度感覚障害や膀胱直腸障害が認められた.リハビリテーション目的で当院へ入院となった.最高機能は,ロフストランド杖歩行で約50mを見守りにて可能だったが,ADLでは車椅子を使用していた.歩行に対して「足が痺れて支えている感覚がわからないので集中しないと歩けない」,排泄に対しては「歩行中に失禁してしまいそうで不安」の訴えがあり,積極的な練習やADL導入が難しかった.
【病態解釈】
「歩行中に左右の足で支えられている感じがしない」「歩行中に失禁してしまうかもしれない」という不安感が強く,自己の身体状況を再認していく学習が不足したことで,歩行がADLに汎化しなかったと考えた.
【介入および結果】
身体状況の再認の手段として活動日誌(①NRS:痺れ,②歩数:1日の歩数,③排泄・歩行に関して自由記載)を実施した.介入から12週後,痺れはNRS(R/L):10/10→8/4,歩数は672歩→3837歩と変化が見られた.感覚は表在・深部ともに重度鈍麻ではあるが,感覚障害の程度に左右差があると認識できるようになり,左下肢の感覚を手がかりとした歩行練習が可能となった.排泄に関しては,運動中に多少の尿便漏れはあるが,事前の準備(リハビリ前の排泄やパッドの使用)を行うことで歩行に対するネガティブな発言が減少し,積極的な練習が可能となった.その結果,ADLは片ロフストランド杖歩行自立となった.
【考察】
結果から,感覚に関しては,下肢の感覚情報で左右差があるという知覚の再認識が得られ,排泄に関しては,事前の準備があれば歩行は不安なく行えるという判断に繋がったと考える.このことから,活動日誌を用いて日々の学習経験を文字言語化することは,身体状況を再認するための補助手段になると考える.
【倫理的配慮(説明と同意)】
本発表に関して,本症例には説明し同意を得た.
今回,外傷性脊髄損傷による重度の感覚障害,膀胱直腸障害を呈したことで,歩行や排泄に対しての不安が強く,歩行がADLに汎化しない症例に対し,活動日誌を使用した認知行動療法を経験したので報告する.
【症例紹介】
50歳代,男性.身長160㎝,体重69㎏.交通事故でA病院に搬送され,非骨傷性頚髄損傷(C6/C7)による対麻痺と診断.剣状突起~両下肢全体にかけて重度感覚障害や膀胱直腸障害が認められた.リハビリテーション目的で当院へ入院となった.最高機能は,ロフストランド杖歩行で約50mを見守りにて可能だったが,ADLでは車椅子を使用していた.歩行に対して「足が痺れて支えている感覚がわからないので集中しないと歩けない」,排泄に対しては「歩行中に失禁してしまいそうで不安」の訴えがあり,積極的な練習やADL導入が難しかった.
【病態解釈】
「歩行中に左右の足で支えられている感じがしない」「歩行中に失禁してしまうかもしれない」という不安感が強く,自己の身体状況を再認していく学習が不足したことで,歩行がADLに汎化しなかったと考えた.
【介入および結果】
身体状況の再認の手段として活動日誌(①NRS:痺れ,②歩数:1日の歩数,③排泄・歩行に関して自由記載)を実施した.介入から12週後,痺れはNRS(R/L):10/10→8/4,歩数は672歩→3837歩と変化が見られた.感覚は表在・深部ともに重度鈍麻ではあるが,感覚障害の程度に左右差があると認識できるようになり,左下肢の感覚を手がかりとした歩行練習が可能となった.排泄に関しては,運動中に多少の尿便漏れはあるが,事前の準備(リハビリ前の排泄やパッドの使用)を行うことで歩行に対するネガティブな発言が減少し,積極的な練習が可能となった.その結果,ADLは片ロフストランド杖歩行自立となった.
【考察】
結果から,感覚に関しては,下肢の感覚情報で左右差があるという知覚の再認識が得られ,排泄に関しては,事前の準備があれば歩行は不安なく行えるという判断に繋がったと考える.このことから,活動日誌を用いて日々の学習経験を文字言語化することは,身体状況を再認するための補助手段になると考える.
【倫理的配慮(説明と同意)】
本発表に関して,本症例には説明し同意を得た.