Riabilitazione Neurocognitiva 2023

Presentation information

一般演題

ポスター発表

[P3] 神経系(下肢・体幹)

[P3-16] 麻痺側下肢の荷重時痛により杖歩行獲得に難渋した症例
-脳卒中後の歩行障害に対する介入経験-

*山本 航大1、坂本 隆徳1 (1. 医療法人紅萌会 福山記念病院)

【はじめに】
 脳梗塞後に前足部への荷重が困難となり、麻痺側立脚期に下腿後面に痛みが生じた症例を担当した。前足底部へ硬度識別課題を実施し、一部改善したが痛みが残存した症例を経験したため報告する。

【症例紹介】
 左頭頂葉梗塞後に右不全片麻痺(下肢BrsⅣ)を呈した70歳代女性。下肢に軽度感覚障害を認めた。歩行時に麻痺側下腿へNRS3〜4の痛みを訴え、前足部への荷重を避けていた。5mで「痛くなりそう」と発言し、PCSは36点であった。

【観察】
 ぶん回し歩行を呈し、麻痺側前足部への荷重は不十分で前遊脚期が消失していた。下肢運動覚の認識は良好であったが、麻痺側足関節底屈位を中間位と誤認していた。また、前足底部では硬度が異なるスポンジの識別が困難であった。

【病態解釈】
 足関節底屈位を中間位と誤認し、前足底部の圧情報の認識が不良となり、前遊脚期が消失したと考えた。加えて、足関節と足関節以外の体性感覚情報の不整合により異常な筋緊張が誘発され、痛みが生じていると推察した。 スポンジ硬度識別課題を前足底部に実施し、即時的に痛みの改善を認めたため、前足底部の圧情報に対して介入し、体性感覚情報の整合性が改善されれば痛みが軽減すると考えた。

【介入】
 硬度が5段階あるスポンジの識別課題を座位で前足底部へ実施した。ステップ肢位にてスポンジの硬度識別課題を麻痺側踵部へ行い、各関節の位置関係の回答を求めた。

【結果】
前足底部で硬度の識別は可能となったが、足関節中間位の認識は改善しなかった。麻痺側前足部へ荷重し、100mの歩行が可能となった。PCSは7点で「最近痛みがこないね」と記述した。しかし、100m以上の歩行では痛みが出現した。

【考察】
 前足底部で圧情報の認識が改善したことで、各関節との情報の不整合が改善し、荷重時の異常な筋緊張が是正されたと考える。ADLでの痛み経験が減少したことでPCSが7点となったと考えた。しかし、足関節中間位への認識に改善がなく、100mの歩行で痛みが出現した。今回、前足底部の圧情報と他関節との関係性を考慮した課題を設定したが、足関節位置覚と前足底部圧情報の関係性の課題を実施していない。足関節中間位の認識に関する認知過程を詳細に評価し、圧情報、他関節との関係性を再考した課題を展開する必要があったと考える。

【説明と同意】
 本発表の趣旨を説明し、症例から書面にて同意を得た。