Riabilitazione Neurocognitiva 2023

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一般演題

ポスター発表

[P6] 運動器系

[P6-03] 大腿骨頸部骨折術後に患側が短いと感じる自覚的脚長差が生じた症例に対する介入経験

*伊藤 拓海1、赤口 諒1、矢野 恵夢1、奥埜 博之1 (1. 摂南総合病院 リハビリテーション科)

【はじめに】
 股関節疾患において自覚的脚長差を訴える症例は散見される.今回,転倒による大腿骨頸部骨折後に患側下肢が短く感じると訴えた症例に対する介入経過を報告する.

【症例】
 症例は左大腿骨頸部骨折後に人工骨頭挿入術を施行し,54日経過した70代女性である.歩行時には左立脚中期に骨盤右下制し,杖への過剰な依存を認め,耐久性が低下していた.立位は骨盤右下制に伴い右膝関節が屈曲し非対称であった.下肢長に左右差はなく棘果長70.0cm,転子果長65.5cmであったが,「左足が短いせいで右足が曲がる」と自覚的脚長差を訴えた.骨盤の空間情報については「わからない」と短絡的になり骨盤右下制の自覚は得られないが,座位で骨盤前後傾に伴う足底圧の変化を関連付けて認識することは可能であった.

【病態解釈】
 術後より骨盤の水平位の保持が困難となり,右膝関節屈曲位の努力的な立位保持が定着していた上に,「右足が出しにくい」という経験を重ねていた.そのような非対称な立位姿勢において,右膝関節の屈曲へと注意が向き,その経験に整合性を持たせるために「左足が短い」と誤認していると考えた.つまり,本症例の自覚的脚長差は骨盤の水平性の問題と考え,足底圧の情報を基に骨盤の空間情報が構築できれば,骨盤の水平保持が可能となり,自覚的脚長差が改善するのではないかと考えた.

【介入および経過】
 介入は40分/日,計3日間行なった.端座位で座面に設置したストライプに沿った重心移動を求め,骨盤の運動と足底圧の変化の統合を図った.その結果,6分間歩行は200mから220m(修正Borgは7から5)となった.MMTは初期,最終ともに左腸腰筋4,左中殿筋2,左大腿四頭筋5であった.歩行時の杖への過剰な依存や骨盤右下制は改善し,歩行時に「右足が出しやすくなった」と内省の変化を認め,自覚的脚長差が軽減した.

【考察】
 慢性的な変形性股関節症に対する人工股関節置換術後の自覚的脚長差の要因として,術前からの腰椎側弯などが報告されており,本症例においては骨折受傷後の骨盤のアライメント不良が一因となって誤認が生じた可能性がある.よって,急性期の股関節疾患で自覚的脚長差を訴える症例に対しては,骨盤の水平性の機能を考慮した評価と介入指針の立案が重要である可能性が示唆された.

【倫理的配慮,説明と同意】
 発表に関して本症例に説明を行い書面にて同意を得た.