50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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関連学会合同シンポジウム

関連学会合同シンポジウム10 生体親和性材料の最新知見 (日本整形外科学会)

Fri. Nov 27, 2020 10:00 AM - 11:30 AM 第7会場 (2F J)

座長:松本 守雄(慶應義塾大学医学部 整形外科学教室)、山田 宏(和歌山県立医科大学 整形外科学講座)

[CSP10-2] 多孔質HAp/Colの基礎と臨床

早乙女進一 (安房地域医療センター)

多孔質ハイドロキシアパタイト・コラーゲン複合体は、ハイドロキシアパタイトのナノサイズ結晶とタイプ1コラーゲンのアテロコラーゲンからなる気孔率95%の多孔質の骨補填材である。水分を含侵した際にはスポンジ状の弾力性を有し、手術時の加工性や操作性に優れる。外傷や骨腫瘍で生じた骨欠損はもちろん、最近では脊椎手術の椎体間固定などでも使用されるようになった。多孔質HAp/Colを骨欠損に移植すると、母床の骨組織から「連続した」「旺盛な」骨形成が起こることが動物実験で組織学的に確認されている。骨形成が旺盛な要因として広大なハイドロキシアパタイトの比表面積が挙げられる。多孔質HAp/Colに含まれるハイドロキシアパタイトは長さ50nm以下のナノ結晶であるため比表面積が約75m2/gと広大となり、その結果、骨形成を促進する環境を提供することができていると考えられる。また、一般的なブロックや顆粒状の骨補填材は、骨補填材と母床骨の間に生じる「隙間」の部分において母床骨との一体化に時間を要することが多い。多孔質HAp/Colの場合、弾力性により母床骨に密着するため母床から直接の骨伝導が起こる。母床骨から連続した骨形成はより早期の力学的強度の回復に寄与すると考えられる。ハイドロキシアパタイトは薬剤やタンパク質など様々な分子を吸着することが知られている。骨と関係性が高い増殖因子として骨誘導性の増殖因子であるBone morphogenetic protein(BMP)を強く吸着する。HAp/Colの場合、その広大な比表面積により1gのHAp/Colあたり3.3mgものBMP-2を吸着でき、かつこれが徐放されることを実験的に確認している。実際にHAp/ColをBMPの担体として使用することで、筋肉内に骨組織を誘導できること、骨折モデルで骨癒合を促進できることなどを確認してきた。これらの結果より将来的には単なる骨補填材としての使用だけでなく、薬剤を組み合わせることでさらに骨癒合を促進するようなインプラントとして使用できるようになると考えられる。骨髄炎の予防、治療などを想定しHAp/Colと抗菌剤の吸着の検討も行った。その結果、一部の抗菌剤がHAp/Colに吸着することを確認できた。さらに、HAp/Colに抗菌剤を含侵させてラットの皮下に移植した後、経時的にインプラントを摘出し、その抗菌作用を評価すると、HAp/Colに吸着しない抗菌剤の場合、移植の翌日には抗菌作用を失っていたのに対し、HAp/Colに吸着する抗菌剤の場合、移植後2週間以上も抗菌作用が持続していることが確認された。これらの結果より、HAp/Colに吸着する抗菌剤を含侵させたインプラントは骨髄炎の予防や治療に有効であると考えられた。今回、多孔質HAp/Colの骨補填材としての基礎的なデータ、および新しい使用法に関する実験データを提示するとともに、実際の臨床結果を供覧する。