日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

関連学会合同シンポジウム

関連学会合同シンポジウム17 超適応の臨床生理学 (日本ニューロリハビリテーション学会)

2020年11月27日(金) 15:00 〜 16:30 第6会場 (2F I)

座長:出江 紳一(東北大学大学院医工学研究科)、太田 順(東京大学 大学院工学系研究科 人工物工学研究センター)

[CSP17-3] 神経疾患・精神疾患の治療回復論:主体性(agency)の“超適応”という観点から

前田貴記 (慶應義塾大学医学部精神神経科)

超高齢化が進む我が国においては、加齢や神経疾患・精神疾患による運動機能障害、高次脳機能障害(認知症、意欲低下、気分障害など)が問題になっている。心身の機能が低下した「フレイルティ」状態は、QOLを低下させ、well-beingにも影響を及ぼすことになる。健康で幸福な生活を送るために、心身の機能を「回復」させるための治療・リハビリテーションの理論、方略の確立が求められている。
低下した心身機能を「回復」させるための研究アプローチとしては、まずはニューロンレベル、さらには神経回路レベルでのボトムアップな神経科学的アプローチが重要であるが、一方、心身機能の「回復」は、ボトムアップアプローチだけでは十分ではなく、生きる主体自身の意欲、気分、動機付けなど、意識・アウェアネスのレベルからトップダウンに心身機能にはたらきかけることも重要である。ボトムアップアプローチは、ターゲットとなる心身機能を直接支えている神経系のうち、より局所の神経系へのアプローチとなってしまうが、潜在している、より広汎な神経系を駆動させ、機能を「回復」させるためには、トップダウンアプローチが重要であるものと考える。
我々は、「主体性(agency)」という観点から、トップダウンアプローチが、いかに効果的に神経系を再編成させて、心身機能の”超適応”を促通し、「回復」に至らしめるかについての理論、方略の確立を目指す。いわば、こころから脳へと介入し、脳を変えようという試みである。ボトムアップな神経科学研究と相補的に進めることで、”超適応”が、より高い水準で実現できるものと考えている。