日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

関連学会合同シンポジウム

関連学会合同シンポジウム18 神経生理学から紐解くニューロモデュレーション治療 (日本定位・機能神経外科学会)

2020年11月27日(金) 15:00 〜 16:30 第8会場 (2F K)

座長:杉山 憲嗣(豊田えいせい病院脳神経外科)、藤井 正美(山口県立総合医療センター脳神経外科)

[CSP18-5] 痙縮に対するニューロモデュレーション治療

内山卓也, 高橋淳 (近畿大学 医学部 脳神経外科)

痙縮は脳卒中・脳性麻痺・頭部外傷・脊髄損傷などが原因となる中枢神経障害に伴う筋緊張亢進を主体とし,日常診療で遭遇する機会の非常に多い病態である. 痙縮はこのような上位運動ニューロンの障害により運動速度依存性の伸張反射の亢進を呈し,腱反射の亢進を伴う運動障害とLanceにより定義されており, 上肢では屈筋群,下肢では伸筋群に筋緊張亢進を認め,上位運動ニューロン障害の発症後,様々な期間を経て痙縮は出現する.脳血管障害後に認められる片麻痺は回復期や慢性期において出現し歩行・着衣を阻害し痛みなどにより,日常生活動作を阻害させる.特に重症痙縮例に交感神経過活動状態などを呈した場合は、離床やリハビリテーションに支障をきたし,体幹や四肢関節運動に不可逆的な変化をもたらし,拘縮状態となる.
このようなことから痙縮に対する治療マネージメントは重要であり,その中でバクロフェン髄腔内投与療法(ITB療法)は,神経を損傷することなく,痙縮の増悪・軽減に対して投与量を変更することができ,調節性に優れたニューロモデュレーションの代表的な治療法である.リハビリテーションを中心とした治療にITB療法を導入することにより痙縮を軽減できる.時には劇的に効果を示し患者の日常生活を一変させることもできる.その効果は痙縮を軽減するだけでなく,安静時代謝・呼吸機能・睡眠・意識状態の改善をもたらすこともできる。しかし本邦でのITB療法はようやく2500例を超えたが,欧米に比較してこれら治療の恩恵を受けている患者は少ないと考える.
そこで、痙縮の病態生理を考慮しながらITB療法の作用機序、臨床効果を提示し、痙縮治療の重要性を報告する.