50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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関連学会合同シンポジウム

関連学会合同シンポジウム19 ALSの新たな展開 (日本神経治療学会・日本神経学会)

Fri. Nov 27, 2020 4:45 PM - 6:15 PM 第5会場 (1F C-2)

座長:桑原 聡(千葉大学脳神経内科)、横田 隆徳(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 脳神経病態学分野)

[CSP19-4] ALSの病態および治療法の開発

青木正志 (東北大学 大学院医学系研究科 神経内科)

筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis: ALS)は主に中年期以降に発症し、上位および下位運動ニューロンに選択的かつ系統的な障害をきたす神経変性疾患である。人工呼吸器による呼吸管理を行わないと、発症後2-5年で呼吸不全のために死亡にいたることが多く、ALSは神経疾患のなかで最も過酷な疾患とされる。ALS発症者の約5%は家族性で発症がみられ、家族性ALSとよばれる。1993年に家族性ALSにおいてその一部の原因遺伝子がCu/Zn superoxide dismutase(SOD1)であることが明らかになった。その後、常染色体優性遺伝形式をとる家族性ALSの原因遺伝子として、TAR DNA-binding protein(TDP-43), optineurinやfused in sarcoma/translated in liposarcoma(FUS)遺伝子などが報告された。TDP-43 とFUSはいずれもDNAおよびRNA代謝に関わり、構造・機能共に相同性が高く、ALS病態における共通したメカニズムが想定されている。私たちは慶應義塾大学生理学教室と共同でTDP-43 あるいはFUS遺伝子変異に伴う家族性ALS患者からiPS細胞を樹立し、運動ニューロンへ分化させることにより、特に軸索に特異的な変化に注目した病態解析を行っている。ALSに対する治療は国内外でリルゾールとエダラボンが承認されているものの症状改善効果がなく生存期間延長効果も限定的なため、新たな治療法開発が強く求められている。国内でも医師主導治験を含めて多くの治験が行われている。私たちはわが国発、強力な神経保護作用をもつ肝細胞増殖因子(HGF)によるALS治療法開発を非臨床試験から治験へと進めてきた。現在、大阪大学神経内科と共同で第II相試験を行っているが、既にエントリーは終了した。この試験を完遂し、ALSに対するHGF脊髄腔内投与のproof of concept(POC)取得することで、早期の薬事承認をめざしたい。