50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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関連学会合同シンポジウム

関連学会合同シンポジウム24 経穴刺激による脳・脊髄機能への影響  (全日本鍼灸学会)

Sat. Nov 28, 2020 3:20 PM - 4:50 PM 第6会場 (2F I)

座長:坂口 俊二(関西医療大学)、木村 研一(関西医療大学)

[CSP24-2] 経穴刺激理学療法における脊髄運動神経機能

鈴木俊明 (関西医療大学大学院 保健医療学研究科)

経穴刺激理学療法は、鍼灸医学における循経取穴の理論を理学療法に応用して、独自に開発した新しい理学療法の手法である。症状のある部位や問題となる筋緊張異常を示す筋肉(罹患筋)の上を走行する経絡を同定して、その経絡上に存在する経穴を治療部位とする理論である。具体的には、治療者の指で経穴に垂直方向への圧刺激は筋緊張を抑制、斜め方向では筋緊張促通を目的に実施する。様々な症例に経穴刺激理学療法が応用可能であるが、今回は脳血管障害片麻痺患者への効果に関して報告する。対象は、脳血管障害片麻痺患者 7 名(平均年齢 61.4 歳)、左片麻痺4 名、右片麻痺3名であった。 対象者の罹患期間は平均 3 年 1 ヵ月であった。母指球筋の筋緊張評価として、アシュ ワース・スケール変法は 2(軽度亢進)は5 名、 3(中等度亢進)は2 名であった。安静背臥位にて、麻痺側の正中神経刺激時に母指球上の筋群(母指球筋とする)から F 波を測定した。次に、麻痺側母指球筋の筋緊張抑制を目的に、手太陰肺経の尺沢への経穴刺激理学療法を試行した。経穴刺激理学療法は尺沢に対 して、痛みを感じない程度の最大の強度で垂直方向への圧刺激を1 分間行った(抑制手技)。この経穴刺激理学療法試行中と経穴刺激理学療法終了直後、5 分後、10 分後、 15 分後においても安静試行と同様の条件でF 波を測定 した。F 波分析項目は、振幅 F/M 比とした。振幅 F/M 比は安静時と比較して、経穴刺激理学療法試行中、終了直後、5 分後、10 分後、15 分後に有意に低値を示した。この報告から、脳血管障害片麻痺患者の筋緊張抑制に経穴刺激理学療法の有効性が示唆された。この治療法は、鍼刺激と異なり鍼灸師の免許がなくても経穴の知識があれば実際におこなうことが可能である。理学療法では、セラピストの手を用いて患者の身体を動かす運動療法が代表的である。この運動療法において、セラピストが触れる部位が経穴とするという工夫により、筋緊張改善にともなう身体能力の改善が期待できる。