日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

ランチョンセミナー

ランチョンセミナー20 神経免疫疾患(重症筋無力症) 共催:アレクシオンファーマ合同会社

2020年11月28日(土) 12:15 〜 13:15 第6会場 (2F I)

座長:畑中 裕己(帝京大学医学部 脳神経内科)

[LS20-1] 神経筋接合部と骨格筋の電気的興奮性

久保田智哉 (大阪大学大学院 医学系研究科 保健学専攻 臨床神経生理学)

重症筋無力症(Myasthenia Gravis :MG)は、神経筋接合部のシナプス後膜上の分子に対する臓器特異的自己抗体の作用により、神経筋接合部の機能不全により生じる疾患である。"Myasthenia"の名を関する神経筋接合部疾患には、MG以外にもランバート・イートン症候群(Lambert-Eaton myasthenic syndrome:LEMS)、先天性筋無力症候群(Congenital myasthenic syndrome:CMS)などがあるが、いずれも運動神経終末に達した電気的シグナルが、骨格筋側に有効に伝達できないことがその本態となる。信号の受け手である骨格筋の電気的感受性を制御するのは骨格筋型電位依存性ナトリウムチャネル(Nav1.4)である。Nav1.4については、近年の基礎研究の成果として、クライオ電子顕微鏡法(Cryo-electron microscopy:cryo-EM)による構造の解明、電気生理と光学的手法を融合した実験手法によるチャネルの機能構造連関などが明らかとなった。臨床においては、Nav1.4をコードするSCN4A遺伝子の遺伝子変化が、ミオトニー症候群や周期性四肢麻痺の原因となることが明らかとなり、その病型とチャネル機能の関連も理解が進んでいる。さらに興味深いことに、近年、SCN4A遺伝子のホモ接合性変異によりCMSの表現型を呈する症例報告が相次いでいる。神経筋接合部と骨格筋の電気的興奮性について、現在の知見を紹介する。