50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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ランチョンセミナー

ランチョンセミナー20 神経免疫疾患(重症筋無力症) 共催:アレクシオンファーマ合同会社

Sat. Nov 28, 2020 12:15 PM - 1:15 PM 第6会場 (2F I)

座長:畑中 裕己(帝京大学医学部 脳神経内科)

[LS20-2] MG治療をQOLの観点から考える.MM5はなぜ必要か?

増田眞之 (東京医科大学 神経学分野 脳神経内科)

重症筋無力症(MG)の治療は従来の経口ステロイド療法漸増漸減療法にかわり、早期積極療法(EFT)などで当初より治療薬を少量にとどめ、新規薬剤も導入した患者生活クオリティー(QOL)を重視した治療法が推奨されています。その治療目標にMM5(MMファイブ);“日常生活を送る上でMG症状を支障にならない最小限に抑え経口プレドニゾロン(PSL)を一日あたり5mgまでに減量し維持する”が提案されてきております。(MM;MGFA PIS;post intervention statusにおけるMinimal manifestations)これまでのPSL大量漸増漸減療法と全身型胸腺摘出術を組み合わせ減量中に増悪するとPSLの増量を繰り返す、減量目標を特に定めないと言ったスタイルには少なからず治療による副作用が問題となりPSLによる容姿変容、糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症など著しいQOL悪化が見られます。MGは寛解し生命の危険は無くなったが、生活の質は低下している状況が見られていることは日常臨床でもたびたび経験しておりました。当初QOL評価にはMG患者に特化したスケールが存在していませんでした。2010年に米国のBurnsらMuscle study groupからMG-QOL 15が提案されJapan MG Registryにて日本語版;MG-QOL 15-Jを作成し妥当性信頼性安定性テストを行い、結果クロンバックα係数0.93等と非常に良好な結果が得られました。それを用い横断的観察研究を327例対象に行いました。その結果、患者群を単純にMGFA PIS毎に比較するとMMであるのみではCSR;Complete stable remission 完全寛解やPR:Pharmacological remission; 薬理学的寛解に比べると不十分であり日常生活に支障無いレベルのMMでも何かがQOLを阻害している可能性が示唆されました。そこで、さらに検討を続け経口PSL内服量がQOL阻害因子として大きな事がわかりMMより良好でPSL5mg/day以下の患者でQOLはCSR群と同等に良好で、それ以上ではQOLが悪いと言う結果が得られました。PR群で有ってもPSL5mg以上の群では、MM5群よりもQOLが悪いと言う結果になりました。このような経過でMM5が実現可能である現実的な臨床上の一つの治療目標と提案するにいたりました。後の調査によりMM5は社会生活の制限が改善し家庭での役割も果たせており仕事も順調に行えていることがわかり、家庭内での生活、仕事を含めた社会の中で家庭内及び家庭外全ての場で活き活きとした生活が出来ていることが予想されました。2018年にMG-QOL 15改訂版が発表され、回答を5段階から3段階に減らし三項目を改善し無回答を減らしたより良い質問表として改変しています(MG-QOL 15-r)。日本人患者からも改変時にJapan MG Registryよりデータを提供しておりバリデーションは行うこと無く用いることが出来ます。当日は当院で現在行っているEFT療法や近年MG治療に適応されたエクリズマブを導入した症例のQOL変化なども具体的にご紹介させていただきます。