[P19-6] 著明な疼痛と異常感覚で発症した筋萎縮性側索硬化症の1例
【症例】60歳男性.入院6ヶ月前に右肩の鈍痛と前腕の灼熱感が出現し,その後右上肢の筋力低下・筋萎縮が進行した.入院1ヶ月前に左上肢にも同様の疼痛が出現した.身体所見上,上記所見に加え両上肢腱反射亢進を認めた.神経伝導検査で上肢の一部に運動神経伝導速度の軽度低下,F波潜時延長を認め,左尺骨神経の感覚神経活動電位は消失していた.針筋電図で右上肢筋の急性・慢性脱神経所見を認めた.経頭蓋的磁気刺激では,上位運動ニューロン障害が示唆された.疼痛や異常感覚が目立ち,単一髄節,神経障害では説明困難な筋力低下の分布から神経痛性筋萎縮症を疑った.ステロイド治療,IVIgを行ったが,経過を通じて疼痛と異常感覚は持続し,筋力低下は進行した.最終的に筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断した.【考察】ALSでは,稀に疼痛が筋力低下に先行する症例が報告されている.非典型的な症候を示すALSの診断に,一連の電気生理学的検査が有用であった.