50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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シンポジウム

シンポジウム1 神経筋接合部の臨床検査:感度と特異度

Thu. Nov 26, 2020 8:10 AM - 9:40 AM 第6会場 (2F I)

座長:今井 富裕(札幌医科大学 保健医療学部)

[SP1-3] 神経筋接合部の臨床検査:感度と特異度 反復神経刺激法

畑中裕己 (帝京大学 脳神経内科・神経筋電気診断センター)

神経筋接合部の臨床検査:感度と特異度
神経筋接合部疾患として代表的な2疾患である症筋無力症(Myasthenia Gravis:MG)とランバート・イートン筋無力症候群(Lambert Eaton Myasthenic syndrome: LEMS)について説明する。MG診断はgold standardを定義すること自体が難しいため、感度、特異性とも完全な検査はない。LEMS診断は電気生理学検査の役割が大きく、運動負荷と高頻度刺激が診断基準に入ることが多く、当然電気生理検査の感度が良くなる。
反復神経刺激法(Repetitive Nerve Stimulation、以下RNS)は、神経筋接合部の異常を視覚的・客観的に検出することに優れている。RNSの感度は眼筋型MGでは約5割、全身型MGでは7割強であることに対して、LEMSでは9割以上に漸減現象を認めるが、運動負荷後のCMAP増幅現象と合わせると感度は10割となる。
RNSは単線維筋電図同様にMG、LEMS以外の疾患でも異常値を呈することがある。神経原性変化、筋原性変化の結果として、二次的な神経筋接合部の変性・障害が出現するためRNSの特異性はさほど優れていない。筋萎縮性側索硬化症(ALS)の顔面筋を除いた筋でのRNSの感度は、MGより上である。しかも初診の数はALSのほうが多いことより、もし診察前にRNSの異常があるというふれこみ情報があれば、ALSを念頭に考えてもよいほどである。
MGが重症になると神経筋接合部のblocking現象が持続的に生じCMAP振幅が低下し、漸減現象もさらに悪化するが、遠位筋は正常である場合も多く、多くの研究者は近位筋の検査を勧めている。近位筋の検査として横隔膜、咬筋、舌筋、前鋸筋など様々な研究があるが、筆者の施設では三角筋、僧帽筋、鼻筋をルーチンに行って正常値を構築している。
運動負荷後のRNS検査は異常を検出しやすくする可能性はあるが、一般的には運動負荷をする時間を、被検筋を多くする時間に分配した方が感度はあがるという研究結果が多いことを紹介したい。LEMSに関してはCMAP低下、運動負荷後の振幅増加、漸減現象といった3つの電気生理検査のパラメータがあるが、すべて満たさない症例、MGとのoverlap症例についても紹介する。