50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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シンポジウム

シンポジウム1 神経筋接合部の臨床検査:感度と特異度

Thu. Nov 26, 2020 8:10 AM - 9:40 AM 第6会場 (2F I)

座長:今井 富裕(札幌医科大学 保健医療学部)

[SP1-4] 神経筋接合部検査の感度と特異度-生理学的検査および薬理学的検査

山本大輔 (札幌医科大学 医学部 神経内科)

 重症筋無力症(myasthenia gravis, MG)は自己免疫機序を背景に,神経筋接合部の刺激伝達が障害される疾患である.神経筋接合部障害を検出する検査方法として反復刺激試験や単線維筋電図といった電気生理学的検査の他に,眼瞼易疲労性試験やアイスパック試験などの生理学的試験,塩酸エドロホニウムによる薬理学的試験がある.2種類の生理学的試験は我が国の指定難病制度の診断基準には用いられていないが,古くから行われてきた検査法であり,合併症がなく簡便に行えることが大きな利点である.従って各検査方法の特徴や感度,特異度,陽性/陰性尤度比を理解した上でこれらの検査を行うことは診断の一助となる. 眼瞼易疲労性試験は最大1分間上方固視し,眼瞼下垂が出現もしくは増悪することにより陽性と判定する.感度および特異度に言及した報告は少ないが,おおよそ感度80%,特異度60%程度と考えられる. アイスパック試験は,市販のアイスパックを冷凍し,2分間眼部に押し当てる.眼瞼下垂が改善すれば陽性と判定する.MGの罹患筋では,冷却自体が神経筋接合部の伝達改善をもたらすため,安静・休息を対照としても冷却後に有意な眼瞼下垂の改善がみられる.感度は80-90%程度,特異度は報告によりかなりばらつきが大きく25-100%である. 塩酸エドロホニウム試験は,アンチレクス(商品名)10mgを原液で,または生理食塩水で希釈して静脈注射する.徐脈性不整脈など重篤な有害事象の危険性があるため,数回に分割投与し,症状が改善するか観察する.通常薬効は1分以内に出現し,数分間持続する.偽陽性の除外目的で,プラセボ(生理食塩水)を投与することもある.感度は60-95%,特異度は90%程度であるが,抗MuSK抗体陽性MGでは感度が下がるだけではなく,症状の悪化や下痢などの副作用も出やすいことから,抗MuSK抗体陽性が判明している場合には塩酸エドロホニウム試験を避けた方がよい.