50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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シンポジウム

シンポジウム10 臨床生理検査を用いた頭痛患者の検討

Thu. Nov 26, 2020 4:30 PM - 5:30 PM 第4会場 (1F C-1)

座長:立花 久大(西宮協立脳神経外科病院 脳神経内科)、辰元 宗人(獨協医科大学病院 医療安全推進センター)

[SP10-1] 頭痛患者の光過敏

辰元宗人 (獨協医科大学病院 医療安全推進センター)

片頭痛や緊張型頭痛といった頭痛患者は随伴症状として光過敏を有することが知られている。特に片頭痛は、光過敏(56%)、音過敏(64%)、臭過敏(47%)を伴うことがあり、患者の多くは日常生活や社会生活に支障をきたしている。片頭痛の誘因には、ストレス(80%)や女性ホルモン(65%)がよく知られているが、光(38%)の場合もある。
2010年、視力障害をもつ片頭痛患者においても、光刺激により片頭痛発作が増悪することが明らかにされた。その機序の一部として、網膜からの視覚情報として非画像形成に関わるIntrinsically Photosensitive Retinal Ganglion Cell(ipRGC)の関与が指摘されている。そこで我々は、片頭痛患者(46例)、健常者(46例)を対象にipRGCのピーク波長である青(480nm)と緑(550nm)、赤(610nm)の光刺激を暗室内で与え、不快グレアを評価した。片頭痛患者は健常者よりipRGCのピーク波長の青(480nm)に対してすべての輝度値(110-1860cd/m2)において不快グレアが高かった。緑と赤は、低輝度では片頭痛と健常者で差がみられなかったが高輝度で一部差がみられた。ipRGCのピーク波長の青が光過敏を誘発する可能性が示唆された。片頭痛患者に異なる色(白、青、緑、琥珀、赤)の光刺激を行なった研究では、緑は片頭痛患者にとって最も光過敏を起こしにくい色であることを示し、青が最も起こしやすく、白はその中間であることが示された。また、一般的に明所で働く網膜細胞は錐体細胞であり、網膜電図の結果も錐体細胞の活動を反映すると考えられるため、光過敏の発現には錐体細胞が重要な役割を果たすと考えられた。最近、片頭痛とipRGCとの関連について、functional near-infrared spectroscopy(fNIRS)を用いた片頭痛患者(20例)と健常者(21例)の検討が報告された。方法は、錐体に対する刺激量(測色値)は同一であるが、ipRGCに対する刺激量のみが異なる3種類の白色光源をそれぞれ暗所安静下において照射した。光呈示は片眼、位置はipRGCの存在を考慮して周辺視とし、網膜に到達する光量を一定とするため人工瞳孔を使用した。光刺激呈示における一次視覚野への影響を確認するため、fNIRSを用いてオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの濃度変化量を測定した結果、片頭痛患者の一次視覚野においてipRGC刺激量に依存する血行力学的反応が得られたことより、ipRGCは片頭痛に関与していることが示唆された。本シンポジウムでは、これまでの片頭痛の光過敏における知見を元に、片頭痛に適した光環境を提案していきたい。