[SP11-4] 上肢末梢神経磁界計測による神経活動電流の可視化
上肢末梢神経障害の診断と治療方針決定において、MRIや超音波などの形態診断に加え、神経伝導検査などによる電気生理学的検査法が客観的評価法として有用であり広く行われている。しかし、体表からの電位計測では、神経走行の深さの影響や、神経-電極間の骨・軟部組織の影響を受けるため正確な障害部位診断は困難である。一方、神経の電気活動により発生する磁界は生体組織の影響を受けにくく、理論的に高い空間分解能を有している。この磁界を体外から測定し、発生源の電流を逆計算することで、生体の深部や骨組織内の神経でも神経電気活動を詳細に評価することができる。
我々は1999年から脊髄・末梢神経用の磁界計測装置および信号解析法の開発を行ってきた。これまでに、金沢工業大学、株式会社リコーと共同開発中の超伝導量子干渉素子センサを用いた生体磁気計測装置を用いて、頸椎での脊髄・神経根、腰椎での馬尾・神経根の神経電気活動を可視化できることを報告してきた。現在、末梢神経の磁界計測にも取り組み、健常者と患者のデータを蓄積したので報告する。
手根管部の磁界計測においては、健常者の示指または中指の指神経刺激後の手掌部の磁界計測を行った。示指または中指から手根管部を通過し、近位に伝搬する神経電気活動の可視化に成功し、それぞれの指神経を分離できる分解能を有することも報告してきた。そして、手根管症候群患者において、手根管部の局所的伝導障害を可視化することにも成功している。指神経刺激では刺激できる線維数が少なく症例に限りはあるため、肘関節部で正中神経を刺激するなど、刺激法の改良にも取り組んでいる。
尺骨神経においては、健常者の手関節で尺骨神経を刺激し、肘関節での磁界計測を行うことで尺骨神経電気活動の可視化に成功している。肘部管症候群患者では、従来の神経伝導検査で正常とされた症例でも磁界計測によりインチングをすることで局所的な伝度遅延を検出できる例が認めわれており、有用性が示されている。
腕神経叢部の磁界計測においては、肘関節部での正中神経または尺骨神経刺激後に鎖骨部から頸椎椎間孔に至るまで、正中神経と尺骨神経を分離できる分解能を有して神経電気活動を可視化できることも報告した。そして、腕神経叢部の腫瘍を有する症例において、腫瘍部での伝導障害を可視化することに成功など、神経走行が深く従来の電位計測でインチングが困難である腕神経叢部伝導障害を検出できる可能性が示された。
このように神経磁界計測は、周囲の骨軟部組織の影響を受けにくく、高い空間分解能を有し、簡便にインチングも可能であり、従来の電位計測の偽陰性を軽減できる可能性がある。単純X線画像やMRI画像などの形態情報と、神経電流のインチングを重ね合わせることもでき、術式決定にも有益と考えられる。今後、本手法が様々な末梢神経障害の診断や病態把握に役立つ新たなルーツとなることが期待される。
我々は1999年から脊髄・末梢神経用の磁界計測装置および信号解析法の開発を行ってきた。これまでに、金沢工業大学、株式会社リコーと共同開発中の超伝導量子干渉素子センサを用いた生体磁気計測装置を用いて、頸椎での脊髄・神経根、腰椎での馬尾・神経根の神経電気活動を可視化できることを報告してきた。現在、末梢神経の磁界計測にも取り組み、健常者と患者のデータを蓄積したので報告する。
手根管部の磁界計測においては、健常者の示指または中指の指神経刺激後の手掌部の磁界計測を行った。示指または中指から手根管部を通過し、近位に伝搬する神経電気活動の可視化に成功し、それぞれの指神経を分離できる分解能を有することも報告してきた。そして、手根管症候群患者において、手根管部の局所的伝導障害を可視化することにも成功している。指神経刺激では刺激できる線維数が少なく症例に限りはあるため、肘関節部で正中神経を刺激するなど、刺激法の改良にも取り組んでいる。
尺骨神経においては、健常者の手関節で尺骨神経を刺激し、肘関節での磁界計測を行うことで尺骨神経電気活動の可視化に成功している。肘部管症候群患者では、従来の神経伝導検査で正常とされた症例でも磁界計測によりインチングをすることで局所的な伝度遅延を検出できる例が認めわれており、有用性が示されている。
腕神経叢部の磁界計測においては、肘関節部での正中神経または尺骨神経刺激後に鎖骨部から頸椎椎間孔に至るまで、正中神経と尺骨神経を分離できる分解能を有して神経電気活動を可視化できることも報告した。そして、腕神経叢部の腫瘍を有する症例において、腫瘍部での伝導障害を可視化することに成功など、神経走行が深く従来の電位計測でインチングが困難である腕神経叢部伝導障害を検出できる可能性が示された。
このように神経磁界計測は、周囲の骨軟部組織の影響を受けにくく、高い空間分解能を有し、簡便にインチングも可能であり、従来の電位計測の偽陰性を軽減できる可能性がある。単純X線画像やMRI画像などの形態情報と、神経電流のインチングを重ね合わせることもでき、術式決定にも有益と考えられる。今後、本手法が様々な末梢神経障害の診断や病態把握に役立つ新たなルーツとなることが期待される。