日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム19 TMSを用いた神経生理学的研究と精神科領域への臨床応用

2020年11月28日(土) 10:20 〜 11:50 第5会場 (1F C-2)

座長:鬼頭 伸輔(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院)、野田 賀大(慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室)

[SP19-2] うつ病に対する反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の治療研究

松田勇紀1, 鬼頭伸輔1,2 (1.東京慈恵会医科大学 精神医学講座, 2.国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院)

日本では、2017年9月に薬物療法に反応しないうつ病患者に対する新規治療法としてrTMS療法が承認され、2018年4月に適正使用指針が公表された。さらに、2019年6月に保険収載され、本格的に日本においてうつ病に対するrTMS療法が始まった。これらのことからrTMS療法はうつ病診療において非常に注目されている。しかし、日本においてrTMS療法の臨床研究は諸外国と比べて少ない。本シンポジウムでは、演者らが実施している臨床研究について紹介する。当施設では、保険診療でのうつ病に対するrTMS療法の前向き観察研究を実施している。rTMS療法を受ける患者は、開始前後で各種うつ病評価スケール(HAMD、MADRS、YMRS、 QIDS、PHQ-9)、THINC-itを用いた認知機能の評価、脳画像検査、脳波、近赤外線スぺクトロスコピーの記録を行っている。また、薬物療法に反応しない双極性うつ病を対象としたランダム化二重盲検偽刺激対照比較試験を実施している。本研究は、右前頭前野に対して低頻度刺激を週5日、4週間行い、その後28週の観察期間を設け、rTMS療法の有効性と安全性を検証し、双極性うつ病への適応拡大を目指している。既に論文として公表されている研究として、治療抵抗性うつ病に対して標準的な刺激プロトコールである37.5分と時間を短縮した18.75分の有用性について検討したランダム化比較試験(Kito et al., 2019)、治療抵抗性うつ病に対して次世代の治療機器であるdeep TMSを用いて有効性と安全性を検討したランダム化二重盲検偽刺激対照比較試験(Matsuda et al., 2020)の結果についても報告する。本シンポジウムでは、これらの臨床研究を通して今後のうつ病に対するrTMS療法の臨床研究の課題と展望について考察する。なお、本シンポジウムで紹介する臨床研究は、倫理委員会あるいは認定臨床研究審査委員会の承認を得て、適宜、それぞれの患者本人から、事前に文書および口頭にて十分に説明を行ったうえで、文書による同意を得ている。