50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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シンポジウム

シンポジウム20 脳神経外科手術におけるモニタリングとマッピング

Sat. Nov 28, 2020 1:30 PM - 3:00 PM 第6会場 (2F I)

座長:佐々木 達也(東北医科薬科大学 脳神経外科)、後藤 哲哉(聖マリアンナ医科大学脳神経外科)

[SP20-4] 脳神経減圧術中のモニタリング

福多真史1, 増田浩1, 白水洋史1, 伊藤陽祐1, 藤井幸彦2 (1.国立病院機構 西新潟中央病院 脳神経外科, 2.新潟大学 脳研究所 脳神経外科)

三叉神経痛,片側顔面けいれん,舌咽神経痛などの神経圧迫症候群に対して脳神経減圧術が行われるが,術後に聴力障害を来さないように聴性脳幹反応(Auditory brain stem response: ABR)が術中モニタリングとして用いられる.通常,V波の潜時延長や振幅低下をwarning signとしているが,具体的な基準については各施設間での相違がある.当院では2016年11月から高頻度刺激によるABRモニタリングを導入している.このモニタリングは刺激頻度を従来の10-15 Hzから43.9 Hzに上げて,加算回数を400回とする方法である.これにより従来の刺激頻度では1回の測定に40秒以上かかっていたのが,10秒以内に短縮することが出来て,よりリアルタイムに近いモニタリングが可能となった.当院での高頻度刺激によるABRモニタリングの方法と有用性について解説する.
片側顔面けいれん(Abnormal muscle response: HFS)の症例では,異常顔面筋電図(Abnormal muscle response: AMR)モニタリングが減圧完了の指標として用いられている.通常のモニタリングは機能温存を目的に行われるが,AMRは術中に手術完了の指標となるユニークなモニタリングの一つである.刺激電極は頬骨枝と下顎枝に,記録電極は眼輪筋とオトガイ筋に針電極を設置して,ベースライン,開頭後,硬膜切開後,下位脳神経周囲のくも膜剥離後,責任血管の操作中,減圧完了後,硬膜閉鎖後などの各手術操作段階で適宜測定する.とくに減圧操作中に頻回にAMRを記録することによって,波形が不安定になり,振幅低下や消失が確認できれば,操作している血管が責任血管である可能性が高いため,責任血管の同定には有用なモニタリングであると言える.減圧完了後のAMRの消失の有無とHFSの長期予後とは必ずしも相関しない場合がある.実際の症例におけるAMRモニタリングの有用性と限界について考察する.
AMRの他に術中に減圧完了の指標とするモニタリング方法として,経頭蓋電気刺激による顔面運動誘発電位(Facial motor evoked potential: FMEP)や生理食塩水で誘発される顔面神経のfree-running EMG(frEMG)も行ってきた.FMEPやfrEMGモニタリングもAMRモニタリングを補完する方法として有用な場合がある.その有用性と限界について解説し, AMRの発生機序についても考察を加える.