[SP20-3] 術中VEPモニタリングの有用性と限界
視覚路に関わる脳神経外科疾患では視機能の温存や改善が手術の重要な目的である。しかしながら、意に反し術後に視機能が悪化することも経験する。手術中に視機能の正確なモニタリングが施行できれば、視機能障害の回避が可能となり、術後の機能回復にも貢献できる。1970年代から光刺激による視覚誘発電位(visual evoked potential, 以下 VEP)の術中モニタリングが試みられてきたが、安定性に乏しく臨床的に有用とはいえなかった。そこで、新しい光刺激装置を作製し、網膜電図の同時記録を追加し、propofolを用いた全静脈麻酔を用いたところ、VEPの再現性は良好になり安定したモニタリングが可能となった。しかしながら、術前から高度の視機能障害を有している症例ではモニタリングに有用な再現性のある波形を得ることができなった。これまでの経験では、矯正視力0.01以下でなおかつ半盲程度の視野障害を有している場合にモニタリングできず、本法の限界と思われる。このような症例でもどうしてもモニタリングが必要であれば視神経電気刺激による反応をモニタリングに使用することは可能である。術中VEPの振幅低下を来した手術操作は、視神経、視交叉、視索、側頭葉、後頭葉に至る視覚路の全長にわたっていた。それらの虚血や機械的障害をVEPの振幅低下として捉えることができ、手術にfeedbackすることにより術後の視機能障害を回避できた症例も多く経験した。術中VEPモニタリングは術後の視機能障害の防止ために有用な方法であると思われた。しかし一方では、振幅が残存しても完全な半盲をきたす、ほぼflatになっても視野障害は軽微である、などの限界も経験した。脳神経外手術における術中VEPの有用性と限界について症例を提示して述べる。