[SP3-4] 筋電図検査における検査技師の役割は何か(医師の立場から)
演題の問い,筋電図検査の理想的実施体制について意見交換する題材として,他の検査と比べた筋電図検査の特異点を論じ,また当院での筋電図検査実施体制と問題を紹介したい.筋電図検査は疑われた疾患によって必要な検査項目が異なり,実施中に得られた結果に応じて検査項目を選びなおすこともしばしば必要で,オーダーメイド感が強い.病歴確認や神経学的診察により臨床診断,検査目的と必要な検査項目が設定され,決められた方法で波形記録がなされ,その記録が適切であったか,時には神経学的診察をし直して検証され,必要に応じて検査項目の修正や追加が検討され,最終的に電気生理学的診断がなされる.診察,診断という医師の診療過程に同時並行して遂行されるのが理想で,その点が検体検査や画像検査,他の生理検査と比べて特異な点だと考える.その一方,脳神経内科等の臨床医にとって検査選びや解釈に必要な知識は専門的で,一般普及しているとは言い難い.このような特異性と専門性を重視し,当院では伝統的に依頼医と別な検査担当医師が,依頼医のカルテ記録から検査目的を把握し,必要に応じ病歴確認や神経学的診察を行い,筋電図検査の実施項目を決め,検査中に得た結果に応じて実施項目の追加や修正を行い,最終的な電気生理学的診断を記した報告書を作成して筋電図検査を完遂している.検査技師は当科専属技師1名および病院検査部所属1名が週2回の筋電図検査日のみ出向して補助している.病院所属の出向技師は原則数年度以内に交代,他部門間をローテートする人事体制に置かれている.厚労省の進めるタスク・シフティング等医療勤務環境改善推進事業に明らかなように,医師から技師への検査業務のタスクシフトが求められている.その時流に乗れば,筋電図検査においても技師の職能の最大限まで業務拡大を目指さなくてはならない.業務範囲を定める法的根拠として臨床検査技師等に関する法律によれば,臨床検査技師の定義文に「医師または歯科医師の指示の下に」「厚生労働省令で定める生理学的検査を行うことを業とする者」との文言があり,同法の施行規則に定められている生理学的検査は筋電図検査を含むが,「針電極による場合の穿刺を除く」と明言されている.時流と法的業務制限に鑑み,針電極を使わない筋電図検査を単独で行うこと,針電極を使うものも含めて検査項目の設定や修正,追加について神経学的診察を担う医師に助言することを,専門技師の役割として求めたい.本学会が定める「臨床神経生理専門医・専門技術師研修カリキュラム」はそのための目標として最適である.一方,この目標への到達にはかなりの動機と時間を要するように思う.検査技師の人事においてもローテートによる全般的技能習得だけでなく専属による専門的技能習得も重視されるよう,筋電図分野の地位向上を目指して貢献したい.