[SP5-3] 脳神経内科領域におけるclinical toolsおよびresearch topicsとしての脳波・長時間ビデオ脳波モニタリング
脳波が臨床において活躍するのは、てんかんと意識障害である。発作症状が目立たず、認知症との鑑別が重要となる高齢発症てんかん、精神疾患との鑑別が重要となる辺縁系脳炎、意識障害との鑑別が重要となる非けいれん性てんかん発作重積などでは、脳波検査は必須である。脳波はまた、脳機能の経時的変化をみることができる点でも能力を発揮する。脳波を用いて、抗てんかん薬の治療効果、脳炎や脳症に対する内科的治療の効果を経時的客観的に観察することができ、脳波がこれらの治療戦略の重要な指標となる。脳機能に異常が「ない」ことの診断にも有用である。迷走神経反射性失神、心因性非てんかん性けいれんの診断に脳波検査は欠かせない。脳波の長時間記録で見えてくる所見もある。脳波と同時に筋電図、呼吸状態を記録することにより、不眠や過眠といった睡眠障害の原因や睡眠の構築を知ることができる。何時間も記録することにより、短時間の記録では捉えられなかった非けいれん性てんかん発作重積を検出できたりする。長時間脳波記録やビデオ同時記録を可能にしたのはデジタル脳波記録の技術進歩に依るところが大きい。デジタルデータをファイルに保存することにより、脳波情報を医療機関間でやりとりすることが可能になり、医療連携や遠隔医療を容易にした。デジタル脳波記録の技術進歩は、数日にわたる脳波記録を可能にし、日内変動だけでなく日々変動を観察することも可能にした。ビデオを同時に記録することにより、texting rhythmのように、脳波活動と行動の関係を明らかにできるようになった。データを加工することにより、低周波から高周波までの脳波活動の検証がオフラインで行えるようになり、アナログ脳波時代の0.5Hz~60Hz程度の情報にくらべ圧倒的に多い情報を得られるようになった。遠隔技術の発展と相まって、デジタル脳波を教育ツールとして活用できるようにもなった。これらのことは、脳波が脳研究のツールとして再び活躍するであろう時代の幕開けを示唆している。