日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

ワークショップ

ワークショップ2 拡大するてんかんの遠隔医療

2020年11月26日(木) 14:40 〜 16:10 第2会場 (2F B-1)

座長:中里 信和(東北大学 大学院医学系研究科 てんかん学分野)、榎 日出夫(聖隷浜松病院てんかんセンター)

[WS2-3] 地域医療における遠隔医療の現状

白石秀明 (北海道大学病院 小児科 てんかんセンター)

(地域医療における問題点)
 地域医療において医療を行なう上での問題点を示す。
1)医療機関が少なく、2次医療施設、3次医療施設の境界が不明瞭である。場合によっては1次医療も担っている。
2)診療科のバリエーションが少なく、専門医も稀少である。
3)臨床研修医が主役を担っている一方依存性も強いために容易に破綻する。
 地域におけるてんかん医療に関しても上記の3要点がそのまま当てはまる。
 遠隔医療によってこれらの解決が得られる可能性は高い。
1)1次医療から3次医療まで担うために診療を求める患者が集中する。これらの診療を担うためのリソースは少ないが、遠隔医療・遠隔診断によって地域で不足している診断技術、治療の決定に関して補完が可能になる。
2)診療科のバリエーションが少ないが、遠隔医療・診断によって、専門科のアドバイスを受けることが可能になる。
3)地域医療を担う若い研修医のためにコンサルテーションの垣根が低くなり、同時に専攻医教育が多角的に可能となる。特に、脳波検査・診断は研修医にはハードルが高い様であるが、遠隔診断を行なうことにより正確な診断可能となり、また、施行件数も増え、読影機会が増え、てんかん診療への理解が深まるという相乗効果がある。
(北海道における取り組み)
 北海道においては、2010年から「患者情報共有ネットワーク構築事業・遠隔医療促進モデル事業」が官庁主導して始まった。遠隔医療を行なう上でのインフラ整備に関して補助金が得られる事業で、5年間に渡って行なわれて来た。私どもはこの事業を利用し、遠隔診断に必要なテレビ会議システムの購入、他施設拠点接続サーバの構築を行なった。
 これらのインフラ整備を利用し、2016年から北海道大学病院を基点とした脳波診断に関する病院間契約が複数の病院間で行なわれた。同年から、診療報酬改定により、他病院で施行された脳波記録に関して、遠隔診断を行なうことにより、診療報酬を得られる制度が出来た。この制度を利用し、恒久的に遠隔診断が行なわれる基盤が出来上がった。
 この様なインフラ整備、基盤構築は遠隔地で働く臨床医に対する大きな支えとなり、精神的連結性も生まれる事から、物心両面においてプラスに働く要素が大きい。
(今後の展開)
 新型コロナ感染症の流行により、遠隔医療の担う役割は大きくなっていくものと考えられるが、これまで行なってきたインフラを用いた、遠隔診療にまで踏み込んでいける可能性を考えている。