日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

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ワークショップ

ワークショップ4 脳深部刺激療法の現状と未来

2020年11月27日(金) 08:00 〜 09:30 第4会場 (1F C-1)

座長:深谷 親(日本大学医学部脳神経外科)、藤井 正美(山口県立総合医療センター)

[WS4-2] DBSのプログラミング

藤井正美, 長綱敏和, 長光逸, 金子奈津江, 安田浩章, 浦川学, 山下哲男 (山口県立総合医療センター)

 不随意運動症に対する脳深部刺激療法(DBS)はすでに確立した治療として普及が進んでいるが、刺激のプログラミングや調整法については、一般に十分な理解が得られているとはいえない。また多社が種々の装置を導入しており、プログラミング操作が複雑化している。今回のワークショップではDBSのプログラミングについての基本と応用を分かりやすく解説する。
 刺激のパラメータは刺激強度(VまたはmA)、刺激幅(パルス幅)(μsec)、刺激頻度(Hz)で決定される。通常は刺激幅60-90μsec、刺激頻度130-185Hz程度の高頻度刺激とし、刺激強度を変えることで調整することが多い。刺激強度は定電圧と定電流の設定ができるが、一般に強さを一定にできる定電流設定がよく用いられている。
 脳内電極リードには4極または8極の電極が埋込まれており、術後刺激部位を変更し効果および副作用をみながら至適電極を決定する。刺激方法には至適リード電極を陰極とし、埋没型刺激発生(IPG)装置を陽極とする単極刺激と、陰極と陽極ともに電極リード内に設定する双極刺激がある。単極刺激では低い電流で効率よく放射状に広く刺激ができる反面、強度をあげると構音障害、ジスキネジアや異常感覚を生じやすい。双極刺激では脳内を限局性に刺激できるため副作用がでにくい反面、高電流を要するため電池寿命が短くなり、さらに減薬効果にもやや劣る難点がある。我々は電池寿命を考え、効率のよい単極刺激を好んで用いている。刺激開始は手術翌日とする施設が多いようである。
 IPG装置には充電式と非充電式(バッテリー内蔵型)がある。ジストニアなどに対する淡蒼球刺激では広範囲の刺激に高エネルギーを要するため、寿命が長い充電式を用いることがある。我々はパーキンソン病のDBSでは病状の進行を考え、また装置の進歩が著しいことを考慮し充電式を用いることが多い。
 DBS装置の進歩に伴い、4種類までプログラム設定(マルチプログラミング)ができるようになった。患者自身が自宅でもプログラムを変更でき、刺激強度も担当医が設定する安全な範囲内で症状に合わせて変更ができる。患者用プログラマも進歩し、ケーブルが不要なBluetooth機能で通信が可能になっている。
 現在国内では3社がDBS装置を提供しており、医師用プログラマも当然各社で異なっている。それぞれの機種で医師がプログラマの使い方をマスターし、日進月歩する機能にも対応していかなければならない現状がある。種々のDBS装置のプログラミングができる医療従事者を増やし、DBS装置を埋込んだ患者が困らないような体制作りが求められている。