50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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ワークショップ

ワークショップ4 脳深部刺激療法の現状と未来

Fri. Nov 27, 2020 8:00 AM - 9:30 AM 第4会場 (1F C-1)

座長:深谷 親(日本大学医学部脳神経外科)、藤井 正美(山口県立総合医療センター)

[WS4-3] Adaptive DBS による機能神経外科の治療効果向上への期待

山田和慶 (熊本保健科学大学 保健科学部 リハビリテーション学科 言語聴覚学専攻)

Adaptive “closed-loop” DBS(aDBS)は, 電極周囲のフィールド電位(LFP)をリアルタイムにフィードバックし, 大脳基底核のダイナミックなneuromodulationを可能とする画期的な治療技術である. つい最近まで, 延長ケーブルを介してDBS lead を外部に導出する必要があったが, 現在では完全植込型 パルス発生装置(IPG)が登場し, 市販される予定である. aDBSのためには, 脳電気活動のある特定の周波数帯をbiomarkerとして決定する必要があるが, これをいかに最適化できるかが課題となる. これまで, sensing 部位として, 治療ターゲット[パーキンソン病(PD)の場合, 視床下核(STN)]内, および運動皮質の2通りの研究がなされてきた. 後者は, ジスキネジアと相関するnarrow band gamma activityをbiomarkerとしている. 運動皮質シグナルは電位が大きくアーチファクトが低減される利点があるが, sensingのための運動野ストリップ電極の追加的設置, 2 channelのIPGでは両側の制御が不可能, などの欠点があり, 趨勢は治療ターゲット内のLFPに基づく方法にあると思われる. PDにおいては, 寡動-筋強剛と相関するbeta-band activity(13-35Hz)がフィードバック制御の主たる標的とされてきた. 最近(2017年頃から), 500 msec以上のlong beta burstsがPDの運動機能障害にとってより重要であるとの仮説に基づき, これに絞ったaDBS法が開発されている. aDBSと従来のconventional continuous DBS(cDBS)を比較した研究では, aDBSの効果がやや上回った結果が示されている. しかし, cDBSがaDBSと同じcontacts設定に限定されていたため, cDBSの効果がoptimalではなかったとの指摘がある. 事実DBS-offとの比較で, off-medicaitonにおけるaDBSによるUPDRS改善率は35%であり, これは従来のDBSでも十分達成されてきたレベルでしかない. 現時点では, aDBSはcDBSに比べ, 遜色のない効果を持ち, 電力消費が, 特にon-medicaitonのときに節約される, との控えめの結論に止めておくべきであろう. 一方で, aDBSは明らかな感覚障害を誘発せず, STN-DBSの10%にみられるとされる構音障害を軽減することが示されており, 副作用の低減が期待される. また運動症状の変動が激しいbrittle dyskinesiaの制御にもbeta-based aDBSが有効である可能性がある. 振戦出現時には, beta activityはむしろ抑制されるため, 振戦優位の一部の症例は, aDBSによって適切に制御されない可能性がある. しかし, 振戦制御に限らず, aDBSが劣性であった場合, cDBS によるrescueが可能である利点は強調されるべきであろう. 今後, 慢性効果についての検討が必要であるが, aDBS は患者それぞれの状態に応じて刺激を最適化し, 副作用を低減しつつ, バッテリー寿命を延ばすことが期待され, 機能神経外科の治療効果をに向上に寄与するものと思われる. またaDBSは, PD以外の運動異常症に対して, STN以外の神経核においても応用されていくであろう.