50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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ワークショップ

ワークショップ4 脳深部刺激療法の現状と未来

Fri. Nov 27, 2020 8:00 AM - 9:30 AM 第4会場 (1F C-1)

座長:深谷 親(日本大学医学部脳神経外科)、藤井 正美(山口県立総合医療センター)

[WS4-4] DBSの適応疾患拡大

杉山憲嗣1, 野崎孝雄2, 門脇慎2, 難波宏樹3, 黒住和彦2 (1.豊田えいせい病院 脳神経外科, 2.浜松医科大学 脳神経外科, 3.遠州総合病院 脳神経外科)

今日的な脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation: DBS)は1960年代に頑痛症の治療として開始され、1987年より不随意運動の治療法として、当初パーキンソン病の振戦に対して施行された。1970年代にパーキンソン病モデル霊長類の研究からDBSは中枢神経ループ回路障害病の治療法として注目され、神経難病の中での中枢神経ループ回路障害の検索と、DBSの試行が全世界的に行われた。対象となった中枢神経疾患は不随意運動内でジストニア、バリスムなど、疼痛疾患内で、CRPSや群発頭痛、その他の中枢神経疾患には、てんかん、認知症、耳鳴り、認知症、植物状態などが存在し、そして精神科疾患のうつ病、強迫性障害、トゥレット症候群などが対象となった。
これらの中枢神経疾患に対するDBSの内、ジストニアはFDAで認可され、そして、てんかんに対してもFDAでは認可され、オンデマンド型のDBS機器が使用されるようになった。群発頭痛などの頭痛疾患に関しては、近年非侵襲的なニューロモデュレーション機器が開発され、そちらの使用に切り替えられた。精神科疾患のうち、強迫性障害はUSAではFDAで認可され、EUでCEマークも取得された。うつ病に対するDBSは、3つの多施設共同試験で、シャム刺激に対して有意差が出なかったが、DBS施行後の無作為にDBSを中止した試験ではDBS継続群と中止群で有意差が出現し、また膝下帯状回(area 25)に対するDBS(Broaden trial)のオープン試験では、難治性うつ病患者の中でもDBSのresponderが高率に認められ、今後のRCTプロトコールの練り直しが求められている。
本邦では、ジストニアは2013年に保険が適応となったが、てんかんに対するDBSはまだ承認されていない。そして精神科疾患に対するDBSは、トゥレット症候群のチックに対してのみ保険適応となって施行されており、USA,EUで認可されている強迫性障害に対するDBSは未だに行われていない。浜松医科大学は、2015年11月16日に「重症難治性強迫性障害に対する脳深部刺激療法」の臨床研究が倫理審査委員会で承認されたが、2020年4月に研究責任者が交代する際、5年の研究機関延長を申請し、こちらも承認された。現在2024年10月までの症例登録期間となっている。この間、複数の患者および家族からの問い合わせが複数あったが、まだDBS施行例は存在しない。
以上、DBSの適応拡大について報告する。