[WS5-2] 全般てんかんと焦点てんかんの鑑別
全般てんかんと焦点てんかん、特に前頭葉てんかんの臨床脳波的な鑑別は困難な場合がある。ここでは症例を提示しながら、両者の脳波所見の鑑別ポイントを概説する。症例1:27歳男性。18歳時、右前頭葉に脳挫傷を受傷した。20歳時、意識減損に引き続く、意識消失・全身けいれん発作が出現した。27歳時、薬剤抵抗性にて入院精査を行った。長時間ビデオ脳波モニタリングで、発作間欠時に右前頭部に最大陰性電位を有する全般性棘徐波複合を認めた。左向反を伴う焦点起始両側強直間代発作が記録され、右前頭部に最大陰性電位を有する全般性律動性速波に始まる脳波変化を認めた。頭部MRI上は右前頭葉に瘢痕性病変を認めた。右前頭葉外傷性脳損傷による前頭葉てんかんの診断に至り、右前頭葉焦点切除術を受け、発作消失した。症例2:28歳男性。既往歴に特記事項なし。12歳時、右上肢の震えに引き続く、意識消失・全身けいれん発作が出現した。25歳時、薬剤抵抗性にて入院精査を行った。長時間ビデオ脳波モニタリングで、発作間欠時に両側前頭部に最大陰性電位を有する全般性棘波・多棘波を認めた。ミオクロニー強直間代発作が記録され、全般性棘波・多棘波に始まり全般性律動性速波に進展する脳波変化を認めた。頭部MRI上は異常を認めなかった。若年ミオクロニーてんかんの診断に至り、薬剤調整を行っている。症例1, 2とも強直間代に至る発作を認め、発作間欠時・発作時とも全般性てんかん性異常を呈した。発作間欠時脳波でてんかん性異常の分布が全般性であっても、最大陰性電位が常に片側前頭部であれば前頭葉てんかんの診断が示唆される。さらに発作時脳波で同部に局在を示す律動性速波が確認されれば、診断がより確かとなる。