第97回日本産業衛生学会

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シンポジウム

シンポジウム 21 個人用保護具(PPE: Personal Protective Equipment)を科学する~その立ち位置と現状~

Sat. May 25, 2024 9:00 AM - 11:00 AM 第3会場 (広島国際会議場 B2F ダリア1)

座長: 津田 洋子(帝京大学大学院公衆衛生学研究科、茅ヶ崎安全衛生コンサルラボ), 川島 正敏(東海旅客鉄道株式会社健康管理センター)

数万種類の化学物質が日本国内で輸入、製造、使用され、特別規則(特定化学物質障害予防規則・有機溶剤中毒予防規則・鉛中毒予防規則・四アルキル鉛中毒予防規則)対象外の化学物質でも多くの労働災害が発生している。これらの特別規則対象外の化学物質による労働災害を防止するために、労働安全衛生規則等の一部を改正する省令である厚生労働省令第91号(令和4年5月31日交付)等により事業場の化学物質管理は転換期を迎えた。リスクアセスメント対象物質の増加に加え、濃度基準値の設定や化学物質管理者・保護具着用管理責任者の選任、皮膚等障害化学物質等を扱う際の不浸透性の保護衣・保護手袋等の使用、等が段階的に施行された。リスクアセスメント対象物質や濃度基準値は、今後も追加される予定である。| この省令改正では、対象化学物質を使用する作業者のばく露防止対策として、呼吸用保護具、化学防護手袋や保護衣、保護めがね等の個人用保護具(PPE)に関する内容が多く盛り込まれた。これらの労働衛生保護具は、化学物質のばく露防止対策の基本アイテムとして、以前より用いられているが、法令改正により、さらに使用が徹底されてゆくと考えられる。| 一方、化学物質のばく露リスク低減対策には明確な優先順位があり、PPEは作業環境改善を徹底して行った後にもなお高濃度ばく露する場合など、ばく露対策を補完するために使用するとの位置付けとすべきであり、初めからPPEありきのばく露防止対策は適切ではない。しかしながら、今後安易にPPEの使用を選ぶ事業場が増えることが危惧され、産業保健に携わる専門職は、PPEの立ち位置、および、その効果や限界を知り、作業者の適切な化学物質ばく露防止対策に活かしてゆくことが求められる。| 本シンポジウムでは、4名のシンポジストにご登壇いただく。今回の法令改正とPPE使用について小野真理子氏に課題提起していただき、呼吸用保護具の選択・使用を含む国際的動向を國谷勲氏に、溶接作業者の呼吸器保護に関する疫学調査について辻真弓氏に、経皮吸収化学物質と化学防護手袋について柳場由絵氏にご発表いただく。PPE を選択・使用する視点から、化学物質の自律的管理について議論する機会としたい。|